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松本清張『黒い画集』を読みました。

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今日、松本清張の連作短編集『黒い画集』を読み終えました。先日、自宅療養のお見舞いにいただいたものです。これまで松本清張の作品を読んだことはあまりありませんでしたが、この作品をきっかけにもう少し読んでみようと思いました。で、新潮文庫の松本清張作品を3冊――『点と線』『水の肌』(短編集)『共犯者』(短編集)――を買いました。

以下、この作品集について、巻末解説及びブックカバー裏面の解説を引用します。
『黒い画集』は昭和33年9月から35年6月まで『週刊朝日』に連載された。その作品中から著者がみずから選んだ7編が、この決定版『黒い画集』である。昭和35年といえば安保反対の運動で社会が騒然とした年だが、同時にこの年は、推理小説ブームがひとつの頂点に達した年でもある。『黒い画集』はその推理小説ブームの記念碑的作品である。(評論家・多田道太郎)
安全と出世を願って平凡に生きる男の生活に影がさしはじめる。猝通瓩箸發いΔ戮、後ろ暗く絶対に知られてはならない女関係。どこにでもあり、誰もが容易に経験しうる日常生活の中にひそむ深淵の恐ろしさを描いて絶讃された連作短編集。部下のOLとの情事をかくしおおすために、殺人容疑を受けた知人のアリバイを否定し続けた男の破局を描いた「証言」など7編を収める。

【収録作品】
遭難(『週刊朝日』昭和33年10月5日号~12月14日号)
 端的に言って、ちょっと作り過ぎな作品だと思います。最初から事故ではなく事件だとわかって読んでいるので、事件の概要はすぐにわかります。
 殺人の動機が単純な割に、殺害方法とその暴露場面が凝り過ぎなことに、作り過ぎを感じます。しかし、松本清張をはじめ、多くの推理小説作家がこういう仕掛けを考え続けたから、推理小説というジャンルが発展したのだと思います。
 ところで、「殺人の動機が単純な割に」と書きましたが、その動機ゆえに恨みが募りに募って、殺害方法も複雑になったと考えることもできます。

証言(『週刊朝日』昭和33年12月21日号~12月28日号)
 事件の顛末よりも、この作品が書かれた昭和33年当時の風俗や世相が気になります。
 主人公の石野貞一郎(48)は、会社で使っていた女(22)を退かせて部屋を借りてやり、愛人関係を結んでいます。この女は仕事はしておらず、あたかも「愛人」を職業にしているように読み取れますし、「愛人」がありふれたことのように描かれてもいます。
 推理小説はその時代の風俗や世相を表す鏡かもしれません。同時に、それらの変化とともに忘れ去られるという危うさを含んでいるように思います。

天城越え(『サンデー毎日特別号』昭和34年11月)
 この作品も最初から犯人が誰かわかるし、動機もすぐに想像できます。

寒流(『週刊朝日』34年9月6日号~11月29日号)
 主人公・沖野一郎が、常務への復讐を決意するのが遅すぎます。全146ページの作品ですが、沖野の行動の遅さとも相まって作品自体に冗長さを感じます。また、沖野が探偵や総会屋をまるきり信用する甘さにはほとほと呆れます。
 ラストシーン。「58年型のキャデラック」の場面ですが、これで沖野の復讐は成ったのでしょうか? 権謀術数家の常務のことですから、こんなことで沖野に復讐を許すはずはないと思います。いずれにせよ、現代では考えられない復讐方法だと思います。いくら同じ車種でも自分の車と他人の車を間違えるなんてあり得ません。

凶器(『週刊朝日』昭和34年12月6日号~12月27日号)
 殺人事件の凶器とその隠滅方法がおもしろいと思います。事件は迷宮入りし、のちに担当刑事はそれがとっさの殺人だったように言いますが、それにしてもその隠滅方法はしたたか過ぎます。今、この文章を書いていると、あれは計画性がなければ出来ない殺人だったと思えてきます。
 推理小説というのは、読んでいるときに次々に追加される情報によってあれこれ推理が変わっていきますが、読んだあとでもいろいろ考えされられると思いました。奥が深いってことですね。

(『週刊朝日』昭和34年6月14日号~8月30日号)
 途中、これは単純な殺人事件ではないと気づきました。しかし、最後の4行を読むと、より複雑な事件のように思えてきます。

坂道の家(『週刊朝日』昭和34年1月4日号~4月19日号)
 主人公が痛すぎて読み進めるのが苦痛です。女に入れ込み、騙され、騙されたのがわかっても女から離れられない。どんな事件になるのか? ただ、それを知るために読み続けました。で、それを知って、余計不快になっただけでした。
 この作品を書いた作家の意図は何だったのか? 真面目で吝嗇で狡猾で、小金をためる以外に楽しみのなかった中年男が、若い娘に狂って金も商売も家庭も全て失い、命までも奪われる。それを延々と190ページも読まされた読者はたまったものではありません。

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