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村上春樹『象の消滅 短篇選集1980-1991』を読みました。

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ペーパーバック風の装丁が気に入っています。ただし、紙質はペーパーバックよりずっといいです。

今日、村上春樹の『象の消滅 短篇選集1980-1991』(2005)を読み終えました。
この短編集について、著者による巻頭の「アメリカで『象の消滅』が出版された頃」から一部を引用します。
 この『象の消滅』という本は、アメリカのクノップフ社から1993年に発行された僕の短編小説集“The Elephant Vanishes”の日本語版である。ラインナップも、収録順序も英語版をそのまま踏襲している。もちろん英語から日本語に翻訳されているわけではなく、原則として僕が日本語で書いたかたちのまま――つまりオリジナル・テキストのまま――収録されている。僕の短編小説群はこれまでのところ外国では、原則的にアジアで一部地域とロシアを別にして、この“The Elephant Vanishes”という共通パッケージングで出版されている。そうしないと短編小説の場合、個々の作品の管理がとても面倒なことになってしまうからだ。また英国の劇作家サイモンマックバーニーによって、この中の作品をいくつか組み合わせたかたちで舞台化され(タイトルは“The Elephant Vanishes”)、日本人の役者によって世界各地で公演され、高く評価されることになった。そういういくつかの点で、僕の作家としての履歴にとって、この作品集=セレクションの持つ意味は決して小さなものではない。

【収録作品】( )は収録短編集
ねじまき鳥と火曜日の女たち(『パン屋再襲撃』1986)
 今作品は、やがて『ねじまき鳥クロニクル』(第1・2部94、第3部95)へと発展します。

パン屋再襲撃(『パン屋再襲撃』)
 「ねじまき鳥と火曜日の女たち」に登場した「僕」と妻の、その1、2年前の話。二人はレミントンのオートマティック式の散弾銃でマクドナルドを襲撃し、ビッグマック30個を奪います。
 この作品は映像化したらおもしろいと思います。かつてのパン屋襲撃と今回のマクドナルド襲撃を描きながら、ところどころに「僕」の飢餓感を象徴する海底火山とその真上に浮かぶ小さなボートのイメージを挿入します。とてもシュールな作品になるでしょう。
 ところで、この作品中の空腹に関する表現がおもしろかったので、引用しておきます。
・「オズの魔法使い」にでてくる竜巻のように巨大な空腹感
・空から見たシナイ半島のごとき茫漠とした我々の空腹

カンガルー通信(『中国行きのスロウ・ボート』1983)
 こんな通信をもらったら、大抵の人はビビってしまうでしょう。どう考えたって、このデパートの苦情係は異常です。

四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて(『カンガルー日和』1983)
 作品のタイトルはおもしろいけど、こんな妄想を現実にされたら怖いでしょう。

眠り(『TVピープル』1990)
 主婦の「私」は、眠れなくなってもう17日目になります。そんな「私」の日常が一人称で語られていきますが、ラストが近づくと、読者を恐怖と狂気が包みます。この作品も映像化したらおもしろいと思います。

ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界(『パン屋再襲撃』)
 「僕」はいつものように日曜日の午後に一週間分の日記をつけていました。すると、いつの間にか激しい風が吹き荒れていました。そんな様子を、「僕」は「ローマ帝国の崩壊」になぞらえます。
ちょっとしたことにでも名前をつけると、そのことをずっと忘れないでいられるかも、と思いました。

レーダーホーゼン(『回転木馬のデッド・ヒート』1985)
 妻の女友だちの母親が夫を捨てた原因は、半ズボン(正確にはレーダーホーゼン)にあるという話。

納屋を焼く(『蛍・納屋を焼く・その他の短編』1984)
 時々納屋を焼くという、「僕」の女友達の恋人は『ダンス・ダンス・ダンス』(88)の五反田君の原型のような気がします。

緑色の獣(『レキシントンの幽霊』1996)
 緑色の獣は椎の木の化身? だとしたら、「私」は何と残酷なことをしたんだろう。

ファミリー・アフェア(『パン屋再襲撃』)
 やれやれ、って感じ。

(『カンガルー日和』)
 これもやれやれ、って感じ。僕もハンバーグ・ ステーキが食べたくなりました。

TVピープル(『TVピープル』)
 TVピープルっていったい何者? この作品も『ねじまき鳥クロニクル』(第1・2部94、第3部95)につながっているような気がします。ガルシア・マルケスの『百年の孤独』を注文しました。

中国行きのスロウ・ボート(『中国行きのスロウ・ボート』)
 「僕」が出会った3人の中国人とのエピソードが語られます。大学2年の夏休み、僕は友人と神津島に行きましたが、そこで香港から来ていた2人の中国人と知り合いました。この作品を読み、久々にその当時のことを思い出しました。

踊る小人(『蛍・納屋を焼く・その他の短編』)
 美しい彼女がゾンビ(?)へと変化する場面がおぞましいけど、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』っぽい世界観がおもしろい。

午後の最後の芝生(『中国行きのスロウ・ボート』)
 「僕」の芝刈り、というよりは仕事へのこだわりに共感を覚えます。芝刈りの依頼主である中年の女も「僕」の仕事ぶりを評価し、今ではそこにいない彼女の娘の部屋に案内します。

沈黙(『レキシントンの幽霊』)
 この作品に登場する青木のような人物は他の村上作品にも登場したような気がします。

象の消滅(『パン屋再襲撃』)
 像の消滅は不思議ですが、「僕」が編集者の女性と寝なかったのはもっと不思議です。他の村上作品では主人公はかなりの高い確率で知り合ったばかりの女性と寝ていますから。

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