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『荷風俳句集』を読みました。

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今日、加藤郁乎編『荷風俳句集』(2013)を読み終えました。この本は、永井荷風の俳句や狂歌、小唄、端唄、琴歌、清元、漢詩、俳句にかかわる随筆を編纂したもので、以下のような構成になっています。
 ◆自選 荷風百句
 ◆俳句
 ◆狂歌
 ◆小唄他
 ◆漢詩
 ◆随筆
 ◆写真と俳句

以下、一読して気になった俳句を引用します。

 まだ咲かぬ梅をながめて一人かな
 葡萄酒の色にさきけりさくら艸(さう)
 紅梅に雪のふる日や茶のけいこ
 傘さゝぬ人のゆきゝや春の雨
 物干に富士やをがまむ北斎忌

 散りて後悟るすがたや芥子(けし)の花
 わが儘にのびて花さく薊(あざみ)かな
 涼風(すずかぜ)を腹一ぱいの仁王かな
 住みあきし我家ながらも青簾(あをすだれ)
 柚の香や秋もふけ行く夜の膳

 秋風や鮎焼く塩のこげ加減
 昼月(ひるづき)や木(こ)ずゑに残る柿一ツ
 よみさしの小本(こほん)ふせたる炬燵哉
 雪になる小降りの雨や暮の鐘
 落残る赤き木(き)の実や霜柱

 下駄買うて箪笥の上や年の暮
 後(うしろ)向く女の帯に螢飛ぶ
 思ひ出でゝ恋しき時は夏書(げがき)かな
 冬の夜を酒屋(バア)に夜ふかす人の声
 萩咲くや敷石長き寺の門

 寺に添(そう)て曲れば萩の小道哉
 椎の実の栗にまじりて拾はれし
 風鈴や庭のあかりは隣から
 牡丹散つて再び竹の小庭(こには)かな
 芋の葉に花を添へたり秋海棠(しうかいだう)

 恙なく君鎌倉に在り初鰹
 稲妻に臍(へそ)もかくさぬ女かな
 木犀の香(か)を待つ宵の月見かな
 もてあます西瓜一つやひとり者
 用もなく銭もなき身の師走かな

 青刀魚(さんま)焼く烟(けむり)や路地のつゆ時雨
 雀鳴くやまづしき門の藪椿
 風の日や芥かみ屑散るさくら
 窓際に移すつくゑや風薫る
 鬼灯(ほほづき)やさらでも憎き片ゑくぼ

 葛餅にむかしをおもふ彼岸かな
 ひとり居も馴れゝば楽しかぶら汁
 粥を煮てしのぐ寒さや夜半(よは)の鐘
 香(かう)焚くや物煮し後の古火鉢
 捨てし世も時には恋し初桜

 羊羹の高きを買はむ年の暮
 藤の花さく縁側に昼寐かな
 名月や観音堂の鬼瓦


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