今日、中村文則の『王国』を読み終えました。
ストーリー等については、以下の通りです。
ストーリー等については、以下の通りです。
組織によって選ばれた「社会的要人」の弱みを人工的に作ること、それがユリカの仕事だった。ある日、彼女は見知らぬ男から忠告を受ける。
「あの男に関わらない方がいい……何というか、化物なんだ」
男の名は木崎。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から語りかける男の声――圧倒的に美しく輝く「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。世界中で翻訳&絶賛されたベストセラー『掏摸』の兄妹篇が待望の文庫化!(ブックカバー裏表紙より)
「あの男に関わらない方がいい……何というか、化物なんだ」
男の名は木崎。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から語りかける男の声――圧倒的に美しく輝く「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。世界中で翻訳&絶賛されたベストセラー『掏摸』の兄妹篇が待望の文庫化!(ブックカバー裏表紙より)
◆この作品の構成なり、内容なりについて語るのはとても難しいことなので、巻末の著者による解説「文庫解説にかえて――『王国』について」を抜粋して引用します。
(この本は)『掏摸』という小説の兄妹篇で、主人公は二人とも、木崎、と呼ばれる男と対峙している。
『掏摸』のテーマには(物語における構図として)旧約聖書がある。本来ならこの『王国』は、その流れとして新約聖書(作中にもある通り、磔となったキリストが、最後に神の「裏切り」に遭うという「特殊な」解釈での新約聖書)の構図となるはずだったが、『掏摸』において発生したある「誤差」によって、この小説が、木崎(神的なもの)の下で引き続き動き続ける構図(新約聖書)から、木崎の要求や思惑を裏切り、刃向い続けるというグノーシス主義(キリスト教における異端)の構図に変化した、ということになっている。さらにそこから、キリスト教より古いギリシャ・ローマ神話へ接続していく。そして『掏摸』で木崎よりさらに「上位」の存在として塔を置いたのに対し、この小説では読んでいただいた通り月を置いている。
◆著者が「何もこんなことを考えながらこの小説を読む必要はなく、これはあくまで裏テーマである」と述べているように、僕としては主人公ユリカが絶体絶命のピンチをいかに切り抜けていくのかという、ハラハラドキドキの展開に面白さを感じながら読みました。
(この本は)『掏摸』という小説の兄妹篇で、主人公は二人とも、木崎、と呼ばれる男と対峙している。
『掏摸』のテーマには(物語における構図として)旧約聖書がある。本来ならこの『王国』は、その流れとして新約聖書(作中にもある通り、磔となったキリストが、最後に神の「裏切り」に遭うという「特殊な」解釈での新約聖書)の構図となるはずだったが、『掏摸』において発生したある「誤差」によって、この小説が、木崎(神的なもの)の下で引き続き動き続ける構図(新約聖書)から、木崎の要求や思惑を裏切り、刃向い続けるというグノーシス主義(キリスト教における異端)の構図に変化した、ということになっている。さらにそこから、キリスト教より古いギリシャ・ローマ神話へ接続していく。そして『掏摸』で木崎よりさらに「上位」の存在として塔を置いたのに対し、この小説では読んでいただいた通り月を置いている。
◆著者が「何もこんなことを考えながらこの小説を読む必要はなく、これはあくまで裏テーマである」と述べているように、僕としては主人公ユリカが絶体絶命のピンチをいかに切り抜けていくのかという、ハラハラドキドキの展開に面白さを感じながら読みました。
◆『掏摸』の主人公は死んだのか? その答えがありました。