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『虚子五句集』(上)を読みました。

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今日、高浜虚子の代表的句集5つを収めた岩波文庫『虚子五句集』(96)上下2冊が揃いました。新品がなかったので中古品を購入しましたが、上下ともとても良い状態です。
以下に5つの句集を列記しましたが、それぞれの句集は俳句雑誌『ホトトギス』の500号記念、550号記念、600号記念、650号記念として、虚子が自選して出版したものです。ただし、『七百五十句』は虚子の死後、長男の高浜年尾と次女の星野立子が選んで出版しています。
なお、句集名=ほぼ収録句数になっていますが、合計すると3,050句+αになります。
以下、一読して気になった句を引用しようと思いますが、3,000句以上あり一気には読めないので、読み終えたらこの記事をアップしようと思います。
 ◇五百句(1937)
 ◇五百五十句(43)
 ◇六百句(46)
 ◇六百五十句(55)
 ◇七百五十句(64)


◆五百句(1937)
 海に入りて生れかはらう朧月
 大根の花紫野大徳寺
 人病むやひたと来て鳴く壁の蝉
 盗んだる案山子(かがし)の笠に雨急なり
 元朝の氷すてたり手水鉢(ちょうずばち)

 間道の藤多き辺(へ)へ出でたりし
 雨に濡れ日に乾きたる幟(のぼり)かな
 遠山(とおやま)に日の当りたる枯野かな
 美しき人や蚕飼(こがい)の玉襷(たまだすき)
 山寺の宝物見るや花の雨

 或時は谷深く折る夏花(げばな)かな
 鎌とげば藜(あかざ)悲しむけしきかな
 行水の女にほれる烏かな
 村の名も法隆寺なり麦を蒔く
 芳草や黒き烏も濃紫(こむらさき)

 寂(せき)として残る土階や花茨(はないばら)
 門額の大字に点(とも)す蝸牛(かぎゅう)かな
 主客閑話ででむし竹を上るなり
 桐一葉(きりひとは)日当りながら落ちにけり
 秋扇(しゅうせん)や淋しき顔の賢夫人

 老(おい)の?茲に紅潮(くれないさ)すや濁り酒
 秋空を二つに断てり椎大樹
 煮ゆる時蕪汁(かぶらじる)とぞ匂ひける
 酒旗(しゅき)高し高野の麓鮎の里
 葛水(くずみず)にかきもち添へて出されけり

 新涼の驚き貌(がお)に来りけり
 三世(さんぜ)の仏(ぶつ)皆座にあれば寒からず
 春風や闘志いだきて丘に立つ
 灯取虫(ひとりむし)燭を離れて主客あり
 葡萄の種吐き出して事を決しけり

 烏飛んでそこに通草(あけび)のありにけり
 これよりは恋や事業や水温む
 麦笛や四十の恋の合図吹く
 秋の灯に照らし出す仏皆観世音
 天日のうつりて暗し蝌蚪(かと)の水 ※蝌蚪=おたまじゃくし

 風鈴に大きな月のかかりけり
 ばばばかと書かれし壁の干菜(ほしな)かな
 白牡丹(はくぼたん)といふといへども紅(こう)ほのか
 かりに著(き)る女の羽織玉子酒
 古椿ここだく落ちて齢(よわい)かな

 古蚊帳の月おもしろく寝まりけり
 橋裏を皆打仰ぐ涼舟(すずみぶね)
 棚ふくべ現れ出でぬ初嵐
 踏青や古き石階あるばかり
 一片の落花見送る静(しずか)かな

 旅笠に落ちつづきたる木(こ)の実かな
 流れ行く大根の葉の早さかな
 寒き風人待ち来る煖炉かな
 虻落ちてもがけば丁字(ちょうじ)香るなり
 眼つむれば若き我あり春の宵

 這入(はい)りたる虻にふくるる花擬宝珠(はなぎぼし)
 炎天の空美しや高野山
 蜘蛛打つて暫(しばらく)心静まらず
 もの言ひて露けき夜と覚えたり
 蕗の薹の舌を逃げゆくにがさかな

 われの星燃えてをるなり星月夜
 酒うすしせめては燗(かん)を熱うせよ
 花の雨降りこめられて謡(うたい)かな
 凍蝶(いてちょう)の己(おの)が魂追うて飛ぶ
 酌婦来る灯取虫より汚きが

 玉虫の光残して飛びにけり
 観音は近づきやすし除夜詣


◆五百五十句(43)
 鴨の中の一つの鴨を見てゐたり
 我心春潮にありいざ行かむ
 眉目(みめ)よしといふにあらねど紺浴衣
 必ずしも鯊(はぜ)を釣らんとにはあらず
 客ありて梅の軒端(のきば)の茶の煙

 かりそめの情は仇(あだ)よ春寒し
 折り折りて尚(なお)花多き宮椿
 たとふれば独楽(こま)のはぢける如くなり
 花の如く月の如くにもてなさん
 玉虫の光を引きて飛びにけり

 此谷を一人守れる案山子(かがし)かな
 落花生喰ひつゝ読むや罪と罰
 行年(ゆくとし)や歴史の中に今我あり
 春闌(たけなわ)暑しといふは勿体なし
 喜びにつけ憂きにつけ髪洗ふ

 棟並(な)めて早稲田大学秋の空
 面やつれしてかつかつと夜食かな
 焚火(たきび)そだてながら心は人を追ふ
 掃きしあと落葉を急ぐ大樹かな
 石はうる人をさげすみ寒鴉(かんがらす)

 たとふればすみ田の春のゆきしごと
 物の芽にふりそゝぐ日をうち仰ぎ
 春寒(はるさむ)もいつまでつゞく梅椿
 黄いろなる真赤なるこの木瓜(ぼけ)の雨
 道々の余花を眺めてみちのくへ

 余花に逢ふ再び逢ひし人のごと
 秋風やうかとしてゐし一大事
 悴(かじか)める手にさし上げぬ火酒の杯
 水仙に春待つ心定まりぬ
 桜餅籠無造作に新しき

 春宵(しゅんしょう)の此一刻を惜むべし
 花の宿ならざるはなき都かな
 吾も亦(また)紅(くれない)なりとついと出(い)で
 秋風や相逢はざるも亦よろし
 名をへくそかづらとぞいふ花盛り

 吾も老いぬ汝(なれ)も老いけり大根馬(だいこうま)
 よろよろと棹がのぼりて柿挟む
 雲なきに時雨を落す空が好き
 立ち昇る炊煙の上に帰り花
 おでんやを立ち出でしより低唱す

 時雨(しぐ)るゝを仰げる人の眉目かな
 大仏に到りつきたる時雨かな
 鼕々(とうとう)と昇り来りし初日から
 懐手(ふところで)して人込みにもまれをり
 美しく耕しありぬ冬菜畑(ふゆなはた)

 冬日濃しなべて生きとし生けるもの
 伏して思ふ朧々(おぼろおぼろ)の昔かな


◆六百句(46)
 大仏に袈裟掛にある冬日かな
 苞(つと)割れば笑みこぼれたり寒牡丹
 過ぎて行く日を惜みつつ春を待つ
 之を斯(か)く龍の玉とぞ人は呼ぶ
 雛納め雛のあられも色褪せて

 破れ傘(やれがさ)を笑ひさしをり春の雨
 経の声和し高まりつ花の寺
 春泥に映りすぎたる小提灯
 神前に花あり帽をとり進む
 散る花を悼む心も慌(あわただ)し

 窓外の風塵春の行かんとす
 石段を登り漁村の寺涼し
 牛も馬も人も橋下に野の夕立(ゆだち)
 燕(つばくろ)やヨツトクラブの窓の外
 昼寝覚め又大陸の旅つづく

 襖みなはづして鴨居縦横に
 夕闇の迷ひ来にけり吊荵(つりしのぶ)
 静(しずか)に居団扇の風もたまに好(よ)し
 夫婦(めおと)らし酸漿市(ほおずきいち)の戻りらし
 よく化粧(けわ)ひよく著(き)こなして日傘さし

 示寂(じじゃく)すといふ言葉あり朴散華(ほおさんげ)
 霧濃(こゆ)し姫向日葵のそよぎをり
 ほととぎす鳴きすぐ宿の軒端かな
 襷(たすき)とりながら案内(あない)や避暑の宿
 自転車に跨がり蝉の木を見上げ

 百姓の木蔭に休む残暑かな
 秋の山首をうしろに仰ぎけり
 鰯雲日和(ひより)いよいよ定まりぬ
 大寺の戸樋(とひ)を仰ぎぬ秋の雨
 本堂の柱に避くる西日かな

 見失ひ又見失ふ秋の蝶
 新聞をほどけば月の芒(すすき)かな
 菊其他キヤラメルも亦供へあり
 機織虫(はたおり)の鳴き響きつつ飛びにけり ※機織虫=キリギリスの異称
 大木の見上ぐるたびに落葉かな

 噂過ぐ時雨のすぐる如くにも
 簪(かんざし)の耳掻(みみかき)ほどの草の花
 そのあたりほのとぬくしや寒牡丹
 海の日に少し焦げたる冬椿
 連翹(れんぎょう)の一枝円を描きたり

 春惜むベンチがあれば腰おろし
 ぼうたんに風あり虻を寄らしめず
 在りし日の如くに集ひ余花の庵(いお)
 やす扇ばりばり開きあふぎけり
 蝶あわてとびまどひをり草刈女(くさかりめ)

 今日の興泰山木の花にあり
 炎天や額の筋の怒(いか)りつつ
 用ゆれば古籐椅子も用を為す
 向日葵を画布一杯に描きけり
 何事も人に従ひ老涼し

 秋灯の下に額を集めけり
 苔の道辷(すべ)りしあとや墓まゐり
 悲しさはいつも酒気ある夜学の師
 足さすり手さすり寝(い)ぬる夜寒かな
 道のべの延命地蔵古稀の春

 大仏の境内梅に遠会釈(とおえしゃく)
 家々の軒端の梅を見つつ行く
 長谷寺に法鼓(ほうこ)轟く彼岸かな
 砂浜を斯(か)く行く防風摘みながら
 紅梅に薄紅梅の色重(いろがさ)ね

 今日ここの花の盛りを記憶せよ
 沈丁(じんちょう)の香の石階に佇みぬ
 法外の朝寝もするやよくも降る
 一蝶の舞ひ現れて雨あがる
 手にうけて開け見て落花なかりけり

 行き過ぎて顧みすれば花しどみ
 脇息に手を置き春を惜みけり
 君とわれ惜春の情なしとせず
 生きてゐるしるしに新茶おくるとか
 温泉(ゆ)の客の皆夕立を眺めをり

 秋風や顧みずして相別る
 よべの月よかりしけふの残暑かな
 過ちは過ちとして爽やかに
 夕立(ゆだち)来て右往左往や仲の町
 いつの間に壁にかかりし帚草(ははきぐさ)

 天高し雲行く方(かた)に我も行く
 椿の葉最も揺れて小鳥居る
 不思議やな汝(な)れが踊れば吾が泣く
 君を送り紅葉がくれに逍遥す
 話しつつ行き過ぎ戻る梅の門

 ただ中にある思ひなり冬日和
 人を見る目細く日向ぼこりかな
 開帳の時は今なり南無阿弥陀
 駒繋(つな)ぐごと自転車を梅が下
 犬ふぐり星のまたたく如くなり

 一時(ひととき)を庭の桜にすごさばや
 落椿(おちつばき)道の真中に走り出し
 春風や離れの縁の小座蒲団
 もてなしの心を花に語らしめ
 蒼海の色尚(なお)存す目刺かな

 昨日今日客あり今日は牡丹剪る
 兎も角も落着き居(お)れば暑からず
 何某(なにがし)の院のあととや花菖蒲
 辛辣の質(さが)にて好む唐辛子
 此頃はほぼ其頃の萩と月

 虹立ちて忽(たちま)ち君の在る如し
 その辺を一廻りしてただ寒し
 榾(ほだ)の火の大旆(たいはい)のごとはためきぬ
 鶏(とり)にやる田芹(たぜり)摘みにと来し我ぞ
 雪深く心はづみて唯歩く

 春雷や傘を借りたる野路の家
 兵燹(へいせん)を逃れて山の月の庵(いお)
 提灯を借りて帰りぬ蛍狩
 大根を鷲づかみにし五六本
 炬燵出ずもてなす心ありながら


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