今日、井上井月(いのうえ せいげつ)の句集『井月句集』(復本一郎編、2012)を読み終えました。
以下、井月についてWikipediaから引用します。
東風(こち)吹くや子供のもちし風車
春雨や心のまゝのひぢ枕
春の野や酢みそにあはぬ草の無(なし)
遣(や)り過(すぎ)し糸のたるみや凧(いかのぼり)
手に汗を握りこぶしや鷄合(とりあはせ)
雛祭り蝶よ花よとかしづかれ
雛に供ふ色香めでたし草の餅
恋猫の又してもなく月夜かな
行雁に後(おく)れて立や安旅籠(やすはたご)
雁がねに忘れぬ空や越の浦
その声の月に隠るゝ蛙(かはづ)かな
呼び捨にならぬ蚕の機嫌かな
表から裏から梅の匂ひかな
誰(た)が門(かど)ややみに匂ひの梅しろし
梅が香や栞(しほり)して置く湖月抄
梅が香をやらじと結ぶ垣根かな
翌日(あす)しらぬ身の楽しみや花に酒
咲き急ぐ花や散日の無きやうに
旅人の我も数なり花ざかり
まだ咲(さか)ぬ花を噂やきのふけふ
宵ながら提灯借て花心
願うても又なき花の旅路かな
そねまるゝほど艶(えん)もなし山ざくら
花は葉にもたれ合うてや玉椿
兎(と)もすれば汗の浮く日や木瓜(ぼけ)の花
菜の花に遠く見ゆるや山の雪
羽二重のたもと土産や蕗の薹(ふきのたう)
時めくや菜めし田楽山椒みそ
春の気のゆるみをしめる鼓(つづみ)かな
出た雲のやくにも立たぬ暑さかな
涼しさの真たゞ中や浮見堂(うきみだう)
気の合うて道はかどるや雲の峰
白雨(ゆふだち)の限(かぎり)や虹の美しき
陰る雲照くもそよぐ青田かな
ひとつ星など指(ゆびさ)して門(かど)すゞみ
楠に付(つい)て廻るや夏座舗
うるさしと猫の居ぬ間を昼寝かな
浴衣地によき朝顔の絞りかな
夏痩やとる筆さへも仮名まじり
山の端(は)の月や鵜舟(うぶね)の片明り
もてなしにみさごのすしやきのふけふ
時鳥(ほととぎす)酒だ四の五の言はさぬぞ
姿鏡(すがたみ)にうつる牡丹の盛りかな
秋立や声に力を入れる蟬
塗り下駄に妹(いも)が素足や今朝の秋
新蕎麦や夜寒(よさむ)の客を呼びにやる
鶏頭やおのれひとりの秋ならず
姿鏡(すがたみ)に映る楓(かへで)の夕日かな
鬼灯(ほほづき)を上手にならす靨(ゑくぼ)かな
笠を荷にする旅空や秋の冷(ひえ)
何云はん言の葉もなき寒さかな
時雨(しぐる)るや馬に宿貸す下隣(したどなり)
兎角して初雪消(けす)な料理人
しめやかに神楽の笛や月冴(さゆ)る
酒好きの取持顔(とりもちがほ)や蛭子講(えびすこう)
下戸の座の笑ひ小さし蛭子講
薬喰(くすりぐひ)相客のぞく戸口かな
埋火(うづみび)や何を願ひの独りごと
迷惑の日も家礼(かれい)とや煤払(すすはらひ)
冬の蠅牛に取りつく意地もなし
茶の花や見つけし時は盛りすぎ
冬牡丹切(きる)の折(をる)のゝ沙汰でなし
菊の香を偸(ぬすむ)や石蕗(つは)の咲いそぎ
雪に寝た南天起す柄杓(ひしやく)かな
目出度さも人任せなり旅の春
なすとなくするともなしに三ヶ日
犬ころの雪ふみ分てはつ日かげ
以下、井月についてWikipediaから引用します。
文政5年(1822年)?~明治20年2月16日(1887年3月10日)。日本の19世紀中期から末期の俳人。本名は一説に井上克三(いのうえかつぞう)。別号に柳の家井月。「北越漁人」と号した。信州伊那谷を中心に活動し、放浪と漂泊を主題とした俳句を詠み続けた。その作品は、後世の芥川龍之介や種田山頭火をはじめ、つげ義春などに影響を与えた。この句集は「発句篇」「俳論篇」「参考篇」で構成されていますが、「発句篇」を一読して気になった句を引用します。
東風(こち)吹くや子供のもちし風車
春雨や心のまゝのひぢ枕
春の野や酢みそにあはぬ草の無(なし)
遣(や)り過(すぎ)し糸のたるみや凧(いかのぼり)
手に汗を握りこぶしや鷄合(とりあはせ)
雛祭り蝶よ花よとかしづかれ
雛に供ふ色香めでたし草の餅
恋猫の又してもなく月夜かな
行雁に後(おく)れて立や安旅籠(やすはたご)
雁がねに忘れぬ空や越の浦
その声の月に隠るゝ蛙(かはづ)かな
呼び捨にならぬ蚕の機嫌かな
表から裏から梅の匂ひかな
誰(た)が門(かど)ややみに匂ひの梅しろし
梅が香や栞(しほり)して置く湖月抄
梅が香をやらじと結ぶ垣根かな
翌日(あす)しらぬ身の楽しみや花に酒
咲き急ぐ花や散日の無きやうに
旅人の我も数なり花ざかり
まだ咲(さか)ぬ花を噂やきのふけふ
宵ながら提灯借て花心
願うても又なき花の旅路かな
そねまるゝほど艶(えん)もなし山ざくら
花は葉にもたれ合うてや玉椿
兎(と)もすれば汗の浮く日や木瓜(ぼけ)の花
菜の花に遠く見ゆるや山の雪
羽二重のたもと土産や蕗の薹(ふきのたう)
時めくや菜めし田楽山椒みそ
春の気のゆるみをしめる鼓(つづみ)かな
出た雲のやくにも立たぬ暑さかな
涼しさの真たゞ中や浮見堂(うきみだう)
気の合うて道はかどるや雲の峰
白雨(ゆふだち)の限(かぎり)や虹の美しき
陰る雲照くもそよぐ青田かな
ひとつ星など指(ゆびさ)して門(かど)すゞみ
楠に付(つい)て廻るや夏座舗
うるさしと猫の居ぬ間を昼寝かな
浴衣地によき朝顔の絞りかな
夏痩やとる筆さへも仮名まじり
山の端(は)の月や鵜舟(うぶね)の片明り
もてなしにみさごのすしやきのふけふ
時鳥(ほととぎす)酒だ四の五の言はさぬぞ
姿鏡(すがたみ)にうつる牡丹の盛りかな
秋立や声に力を入れる蟬
塗り下駄に妹(いも)が素足や今朝の秋
新蕎麦や夜寒(よさむ)の客を呼びにやる
鶏頭やおのれひとりの秋ならず
姿鏡(すがたみ)に映る楓(かへで)の夕日かな
鬼灯(ほほづき)を上手にならす靨(ゑくぼ)かな
笠を荷にする旅空や秋の冷(ひえ)
何云はん言の葉もなき寒さかな
時雨(しぐる)るや馬に宿貸す下隣(したどなり)
兎角して初雪消(けす)な料理人
しめやかに神楽の笛や月冴(さゆ)る
酒好きの取持顔(とりもちがほ)や蛭子講(えびすこう)
下戸の座の笑ひ小さし蛭子講
薬喰(くすりぐひ)相客のぞく戸口かな
埋火(うづみび)や何を願ひの独りごと
迷惑の日も家礼(かれい)とや煤払(すすはらひ)
冬の蠅牛に取りつく意地もなし
茶の花や見つけし時は盛りすぎ
冬牡丹切(きる)の折(をる)のゝ沙汰でなし
菊の香を偸(ぬすむ)や石蕗(つは)の咲いそぎ
雪に寝た南天起す柄杓(ひしやく)かな
目出度さも人任せなり旅の春
なすとなくするともなしに三ヶ日
犬ころの雪ふみ分てはつ日かげ