先日、白洲正子『十一面観音巡礼』(75)を読み、向源寺(滋賀県長浜市)の十一面観音立像に強く心を惹かれました。で、近いうちに見仏に行こうと思い、『1冊でわかる滋賀の仏像 文化財鑑賞ハンドブック』(企画・編集/滋賀県教育委員会事務局文化財保護課/2015)を購入しました。
この本の内容について、巻頭の「はじめに」を引用します。
滋賀県は、全国第4位の国宝・重要文化財保有県です。かつて近江国と呼ばれた本県は、日本列島の中央部に位置し、早くから交通の要衝として開かれ、人と物資の交流が盛んに行われました。7世紀には近江大津宮が営まれ、16世紀には織田信長が安土城を築くなど、たびたび日本史の表舞台にも登場し、多くの文化遺産が生み出されてきました。また、最澄が開いた比叡山の仏教文化による強い影響を受けて、豊かな「神と仏の美」がつむぎだされ花開いた地でもあります。
そのため県内には建造物、美術工芸品、無形文化財、民俗文化財、史跡名勝天然記念物など、あらゆる分野の文化財が質量ともに豊富に伝えられています。それらは県域に広く分布し、今なお地域の暮らしや風土と深く結びついて大切に守り伝えられていることが特徴です。とりわけ、美術工芸品については、1000年以上にわたって仏像や仏画、仏具などの工芸品、さらには経典や古文書など豊かな内容の文化財が伝えられており、「千年の美」と呼ぶべき県民の誇りとするところです。
近年は京都や奈良の文化財を対象にした仏教美術のガイドブック類が刊行されており、滋賀県でも「千年の美」を県民みずからが学び、発信していくための手引書の登場が待ち望まれていました。
本書は、滋賀県に所在する神と仏の美について、それらが生み出され、守られてきた背景を概説するとともに、主として県内に伝わる文化財をモデルに、具体的な仏教美術の見方を解説し、鑑賞の基礎知識としていただけるよう構成したものです
読者のみなさんは本書を片手に滋賀県の神社や寺院、博物館などを訪れ、各地に伝わる神と仏の美を鑑賞していただくとともに、ぜひともみずからが千年の美の「つたえびと」となって、近江の文化財の魅力を滋賀の内外に発信していただく際の一助としていただければ幸いです。
滋賀県教育委員会
そのため県内には建造物、美術工芸品、無形文化財、民俗文化財、史跡名勝天然記念物など、あらゆる分野の文化財が質量ともに豊富に伝えられています。それらは県域に広く分布し、今なお地域の暮らしや風土と深く結びついて大切に守り伝えられていることが特徴です。とりわけ、美術工芸品については、1000年以上にわたって仏像や仏画、仏具などの工芸品、さらには経典や古文書など豊かな内容の文化財が伝えられており、「千年の美」と呼ぶべき県民の誇りとするところです。
近年は京都や奈良の文化財を対象にした仏教美術のガイドブック類が刊行されており、滋賀県でも「千年の美」を県民みずからが学び、発信していくための手引書の登場が待ち望まれていました。
本書は、滋賀県に所在する神と仏の美について、それらが生み出され、守られてきた背景を概説するとともに、主として県内に伝わる文化財をモデルに、具体的な仏教美術の見方を解説し、鑑賞の基礎知識としていただけるよう構成したものです
読者のみなさんは本書を片手に滋賀県の神社や寺院、博物館などを訪れ、各地に伝わる神と仏の美を鑑賞していただくとともに、ぜひともみずからが千年の美の「つたえびと」となって、近江の文化財の魅力を滋賀の内外に発信していただく際の一助としていただければ幸いです。
滋賀県教育委員会
◆目次(抄)
第1章 滋賀の仏像の歴史
1 仏像の誕生と仏教の伝播
2 日本への仏教の伝来
3 近江国での寺院の建立
4 比叡山と天台仏教
5 浄土教ブームで阿弥陀仏造立
6 写実的な新時代の造形
7 禅宗が武家へ、浄土真宗が庶民へ
8 危機を迎えた仏像と保護の取り組み
第2章 種類別 滋賀のさまざまな仏像
◇如来
◇菩薩
◇明王
◇天部
◇高僧
◇神像
第3章 仏像のある寺院をめぐる
1大津・高島エリア
2湖南・甲賀エリア
3湖東・東近江エリア
4湖北エリア
1 仏像の誕生と仏教の伝播
2 日本への仏教の伝来
3 近江国での寺院の建立
4 比叡山と天台仏教
5 浄土教ブームで阿弥陀仏造立
6 写実的な新時代の造形
7 禅宗が武家へ、浄土真宗が庶民へ
8 危機を迎えた仏像と保護の取り組み
第2章 種類別 滋賀のさまざまな仏像
◇如来
◇菩薩
◇明王
◇天部
◇高僧
◇神像
第3章 仏像のある寺院をめぐる
1大津・高島エリア
2湖南・甲賀エリア
3湖東・東近江エリア
4湖北エリア
◆目次(抄)では省きましたが、本書には「千年の美 名品ギャラリー」という記事があり、「石山寺縁起絵巻」「洞照寺阿弥陀如来坐像」「向源寺十一面観音立像」が取り上げられています。
向源寺の十一面観音立像の記事では、関連する文学作品として井上靖の『星と祭』を取り上げています。以下、その部分を引用します。
向源寺の十一面観音立像の記事では、関連する文学作品として井上靖の『星と祭』を取り上げています。以下、その部分を引用します。
新聞の連載小説を、昭和46年に単行本化。琵琶湖上のボート事故で子を亡くした2人の父親が、湖の死者を見守っているという観音像の巡礼を始める。作中、滋賀県各地の十一面観音像について魅力的に紹介され、湖国観音巡りのブームをまきおこした。向源寺像については「大きな王冠をつけ」ているとか、「仏像というより古代エジプトの女帝」のようであるなどの独特な表現が目を引く。※井上靖は好きな作家だし、この作品は読んでいなかったので、さっそく購入しようとしました。しかし、角川文庫は絶版のようで、中古品が2,500円以上しました。で、初めて電子版(Kindle版)を購入しました。