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スチュアート・ウッズ『草の根』を読みました。

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 今日、スチュアート・ウッズの『草の根』(1994、矢野浩三郎訳)を読み終えました。
 『湖底の家』(87)と『警察署長』(84)がおもしろかったので、スチュアート・ウッズの作品をもう少し読もうと思いました。で、『警察署長』のデラノ警察署初代署長ウィル・ヘンリー・リーの孫、そしてビル・リーの息子ウィル・リーが主人公ということで、この作品を選びました。
 この作品について、ブックカバー裏表紙の解説を引用します。
 米国ジョージア州デラノ。この町の初代警察署長ウィル・ヘンリー・リーは、60年前に非業の死を遂げた……時は移り、彼の孫ウィル・リーが弁護士となって帰郷し、上院議員選挙に打って出る。好事魔多し、ウィルは悪夢のようなレイプ殺人事件の裁判にまきこまれてしまう。選挙をめぐる非情な人間模様を描き切った迫真の傑作長篇。

【感想等】
◆この作品は、主人公ウィル・リーが上院議員選挙を戦う物語と、刑事ミッキー・キーンが殺し屋ハロルド・パーカスンを追いつめてゆく物語がパラレル進行しています。
 この手法は場面展開がテンポ良く感じられ、読み手は先へ先へと読み進めます。やがて2つの物語が一つに統合されることが想像され、それがどのような展開になるのか、読み手の想像力がかきたてられます。
 陳腐な表現だし、アメリカ小説ですから当たり前かもしれませんが、アメリカ映画のようなエンターテイメント溢れる作品だと思います。刑事ミッキー・キーンが登場する場面はシリアスですが、ウィル・リーが登場する場面はコメディーのように感じることが多かったように思います。
 なお、パラレル進行の手法(構成)は、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(85)や『海辺のカフカ』(02)、『1Q84』(09)でも使われています。

◆ウィル・リーがある女性との関係を新聞にすっぱ抜かれた!?という場面では、ウィル同様僕もドキドキしましたが、真相がわかった時は大笑いでした。スチュアート・ウッズのストーリー・テリングの巧みさとユーモアのセンス、また政治の世界の現実も感じました。

◆『湖底の家』で主人公ジョン・ハウエルに自叙伝の執筆を依頼したラートン・ピッツがこの作品にも登場します。ジョージア州選出の上院議員に立候補したウィル・リーの選挙資金集めに協力するという役どころです。懐かしい知り合いにあったような心持ちになりました。

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