今日、熊谷達也の連作短編集『調律師』(2013)を読み終えました。これで、熊谷作品は3冊目になります。
この作品について、ブックカバー裏表紙の解説を引用します。
この作品について、ブックカバー裏表紙の解説を引用します。
交通事故で妻を亡くし、自身も大けがを負った結果、音楽を聴くと香りを感じるという共感覚「嗅聴」を得た鳴瀬玲司は、ピアノの調律師を生業としている。さまざまな問題を抱えたピアノ、あるいはその持ち主と日々接しつつ、いまだに妻を忘れられずにいた鳴瀬だったが、ある日、仕事で仙台に向かうことに――。
【感想等】
◆かつて新進気鋭のピアニストとして活躍しながら、交通事故で妻を亡くし、現在はピアノの調律師として生きる鳴瀬玲司が主人公です。彼はピアノの音に匂いを感じるという共感覚「嗅聴」の持ち主で、彼に関わる人々とのドラマが7編の連作短編集となっています。「共感覚」とは? 彼の妻はどうして死んだのか? といったことが、ドラマの進展とともに明らかになっていきます。しかし、第6編「超絶なる瞳のロンド」で、ドラマは大きく変貌します。
以下、各短編の発表時期を記します。なお、初出誌は『オール讀物』です。
・少女のワルツ(2010年8月号)
・若き喜びの歌(2010年12月号)
・朝日のようにやわらかに(2011年8月号)
・厳格で自由な無言歌集(2011年11月号)
・ハイブリッドのアリア(2012年4月号)
・超絶なる瞳のロンド(2012年8月号)
・幻想と別れのエチュード(2012年11月号)
◆かつて新進気鋭のピアニストとして活躍しながら、交通事故で妻を亡くし、現在はピアノの調律師として生きる鳴瀬玲司が主人公です。彼はピアノの音に匂いを感じるという共感覚「嗅聴」の持ち主で、彼に関わる人々とのドラマが7編の連作短編集となっています。「共感覚」とは? 彼の妻はどうして死んだのか? といったことが、ドラマの進展とともに明らかになっていきます。しかし、第6編「超絶なる瞳のロンド」で、ドラマは大きく変貌します。
以下、各短編の発表時期を記します。なお、初出誌は『オール讀物』です。
・少女のワルツ(2010年8月号)
・若き喜びの歌(2010年12月号)
・朝日のようにやわらかに(2011年8月号)
・厳格で自由な無言歌集(2011年11月号)
・ハイブリッドのアリア(2012年4月号)
・超絶なる瞳のロンド(2012年8月号)
・幻想と別れのエチュード(2012年11月号)
この作品は、2011年3月11日に発生した東日本大震災以前に書き始められましたが、第6話「超絶なる瞳のロンド」と第7話「幻想と別れのエチュード」には東日本大震災に遭遇した主人公の苦悩が描かれています。熊谷達也のプロフィールに仙台市生まれとあります。彼はその被災状況を目の当たりにして、当初の構想とは違っても東日本大震災について書かなければならないと考えたのでしょう。仙台のコンサートホールで被災した主人公が、避難所や仙台市内を彷徨う姿が印象的です。
◆「共感覚」とは
ある刺激に対して通常の感覚だけでなく、異なる種類の感覚をも生じさせる、一部の人にみられる特殊な知覚現象をいう。 例えば、共感覚を持つ人は文字に色を感じたり、音に色を感じたり、形に味を感じたりする。(Wikipediaより、一部改編)