Quantcast
Channel: my photo diary
Viewing all articles
Browse latest Browse all 681

熊谷達也『潮の音、空の青、海の詩』を読みました。

$
0
0
イメージ 1

 今日、熊谷達也の長編小説『潮の音、空の青、海の詩』(15)を読み終えました。
 この作品について、NHK出版の解説を引用します。
大震災により失われたもの、未来に伝えていきたいもの
 仙台市内で被災した予備校講師・聡太が、避難所での友人との再会や、日常の復活の中で被災の深刻さを実感していく過程などを描く現在――。転じて50年後、再度の大津波に見舞われた仙河海市を舞台に、防潮堤や放射能廃棄物の受け入れなどを描く未来――。現在と未来の視点を交錯させながら、復興に生きる人々を迫真の筆致で描く物語。地方紙(引用者注:河北新報、沖縄タイムス、岐阜新聞、大分合同新聞、千葉日報など)連載中から評判を呼んだ小説の単行本化。(NHK出版HPより、一部訂正)

【感想等】
◆この作品は、以下のような三部構成になっています。
 第一部「潮の音」は、東日本大震災(2011年3月11日)直後の仙台市と仙河海市が舞台です。主な登場人物は、川島聡太(35)と早坂希(35、『リアスの子』の準主役)が主な登場人物です。
 第二部「空の青」は、西暦2060年、東日本大震災からほぼ半世紀後の仙河海市が舞台です。主な登場人物は、菅原呼人(よひと、9、『希望の海 仙河海叙景』の菅原優人の孫)と待人(まちど)の爺さん(85、川島聡太)です。
 第三部「海の詩」は、東日本大震災から3年後の2014年、仙台市と仙河海市が舞台です。主な登場人物は、川島聡太(38)と早坂希(38)、昆野笑子(38、『微睡みの海』の主人公)です。

◆第一部について
 『リアスの子』の早坂希の中学校の同級生・川島聡太が主人公です。東京での仕事と恋愛に挫折し、仙台市で予備校講師をしていました。
 仙台で東日本大震災に遭遇した聡太のサバイバルが印象に残りました。彼は同じく仙台で被災した中学校の同級生・上村奈津子(『リアスの子』で早坂希の友人)と偶然出会います。やがて、彼女から故郷・仙河海市の情報を聞き、両親を探しに仙河海市に行きます。
 仙河海市の被災状況の説明の中で、異臭の描写にリアリティを感じました。

◆第二部について
 西暦2060年の仙河海市は巨大な防潮堤のため、陸側から海が見えない状態です。25年前に5歳の子供が防潮堤から落ちて死亡してから防潮堤は封鎖され、仙河海市では小学3年生の春の遠足まで防潮堤に登って海を見てはいけない規則になっています。
 小学3年生の呼人は仙河海市の急激な人口減少(2005年:75,000人→2030年:40,000人)に疑問を抱きますが、学校の先生も両親もその答えを教えてくれません。その答えを教えてくれたのは、防潮堤で出会った不思議な老人(待人の爺さん=川島聡太)でした。
 やがて、川島聡太が呼人を探していたこと、そして呼人に与えようとした使命が明らかになります。
 近未来SF小説といった体裁で、熊谷達也という作家の創作の幅広さを感じました。
 
◆第三部について
 第二部で川島聡太の亡くなった妻が誰だったのかわかりましたが、第三部でその経緯が明らかになります。
 『微睡みの海』で、東日本大震災の前日に大島に向かっていた昆野笑子のその後が描かれます。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 681

Trending Articles