今日、村上春樹の14作目の長編小説『騎士団長殺し』(17)を読み終えました。
この作品には不思議な石室(穴)や異次元を思わせる横穴が登場します。これらは『ねじまき鳥クロニクル』(第1・2部94、第3部95)の井戸や『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(85)の洞窟を思い起こさせます。
この作品には不思議な石室(穴)や異次元を思わせる横穴が登場します。これらは『ねじまき鳥クロニクル』(第1・2部94、第3部95)の井戸や『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(85)の洞窟を思い起こさせます。
この作品は、第1部「顕れるイデア編」と第2部「遷ろうメタファー編」の2部(2冊)構成になっていますが、ストーリーは概ね以下の通りです。
妻からの突然の別れ話に戸惑い、「私」は古いプジョー205に乗り、東京→東北(日本海側)→北海道→東北(太平洋側)と、放浪の旅を続けます。やがて、「私」は友人の計らいで彼の父で高名な日本画家・雨田具彦の小田原近郊の山の上の家に住むことになります。
「私」はその家の屋根裏で雨田具彦の日本画『騎士団長殺し』を偶然発見します。また、家の裏の雑木林で小さな祠と石積みの塚を見つけ、石を取り除くと地中に石組みの石室(穴)が現れます。石室には仏具と思われる鈴が納められていました。
石室を解放したことで、「イデア」が騎士団長の姿で現れ、「私」はさまざまな事象が連鎖する不思議な世界へと導かれて行きます。
「私」はその家の屋根裏で雨田具彦の日本画『騎士団長殺し』を偶然発見します。また、家の裏の雑木林で小さな祠と石積みの塚を見つけ、石を取り除くと地中に石組みの石室(穴)が現れます。石室には仏具と思われる鈴が納められていました。
石室を解放したことで、「イデア」が騎士団長の姿で現れ、「私」はさまざまな事象が連鎖する不思議な世界へと導かれて行きます。
【感想等】
◆この作品のタイトルになっている、雨田具彦の日本画『騎士団長殺し』は、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』の世界を飛鳥時代に翻案したものです。つまり、この絵は雨田具彦がウィーン留学中に連座した、ナチ高官暗殺未遂事件を成功したものとして描いたものです。
◆この作品のタイトルになっている、雨田具彦の日本画『騎士団長殺し』は、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』の世界を飛鳥時代に翻案したものです。つまり、この絵は雨田具彦がウィーン留学中に連座した、ナチ高官暗殺未遂事件を成功したものとして描いたものです。
◆第1部「顕れるイデア編」では、「私」の前に不思議な事物や人物が次々に現れます。
◇雨田具彦の日本画『騎士団長殺し』
◇石室に残されていた奇妙な鈴
◇騎士団長の姿を借りて私の前に現れた「イデア」
◇白いスバル・フォレスターの男
◇谷間の向かい側に住む不思議な白髪の人物・免色渉
◇石室に残されていた奇妙な鈴
◇騎士団長の姿を借りて私の前に現れた「イデア」
◇白いスバル・フォレスターの男
◇谷間の向かい側に住む不思議な白髪の人物・免色渉
◆第2部「遷ろうメタファー編」で、「私」は雨田具彦が入所している伊豆高原の養護施設の3階の床に空いた穴から、小田原近郊の山の上にある石室(穴)へと移動します。「私」を石室(穴)へと導いたのは日本画『騎士団長殺し』に描かれた騎士団長と「顔なが」、ドンナ・アンナでした。
騎士団長は自らをイデアだと言い、「顔なが」は自らをただのメタファー(暗喩)だと言います。「私」が雑木林の祠の裏にある、あの石室(穴)を暴いたためにイデアが騎士団長の姿を借りて「私」の前に現れ、そして「顔なが」らの導きによって、伊豆高原から小田原の山の上まで穴の中を移動することになります。
騎士団長は自らをイデアだと言い、「顔なが」は自らをただのメタファー(暗喩)だと言います。「私」が雑木林の祠の裏にある、あの石室(穴)を暴いたためにイデアが騎士団長の姿を借りて「私」の前に現れ、そして「顔なが」らの導きによって、伊豆高原から小田原の山の上まで穴の中を移動することになります。
◆こういった非現実的な展開とは別に、「私」と妻の離婚問題、免色渉という謎に包まれた人物の娘の問題が、荒唐無稽なストーリーに現実味を与えています。
また、たくさんの音楽やクルマ、料理や酒、セックス等についての記述も作品に現実味を与えるもので、村上作品の特徴でもあります。
また、たくさんの音楽やクルマ、料理や酒、セックス等についての記述も作品に現実味を与えるもので、村上作品の特徴でもあります。
◆騎士団長の一風変わった言葉遣いに作家のユーモアを感じます。
・単数なのに、「私」を「諸君」と呼ぶ。
・「ない」と否定する時、「あらない」と言う。例えば、「あたしは霊ではあらない。あたしはただのイデアだ」
・単数なのに、「私」を「諸君」と呼ぶ。
・「ない」と否定する時、「あらない」と言う。例えば、「あたしは霊ではあらない。あたしはただのイデアだ」
◆「私」は妻から別れを告げられた直後、プジョー205に乗って放浪の旅に出ましたが、そのコースがとてもいいです。いつか僕も同じようなコースをプジョー3008で旅したいと思います。
「私」が辿ったのは、東京→(関越道)→新潟→山形→秋田→青森→北海道(3週間)→青森→岩手→宮城→福島で、いわき市の手前で車が故障したため、クルマでの旅はそこで終わっています。北海道ではキャンプと温泉旅館、いいですね。
「私」が辿ったのは、東京→(関越道)→新潟→山形→秋田→青森→北海道(3週間)→青森→岩手→宮城→福島で、いわき市の手前で車が故障したため、クルマでの旅はそこで終わっています。北海道ではキャンプと温泉旅館、いいですね。
◆作品中に登場する音楽一覧
♪ シェリル・クロウ『チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ』
♪ イ・ムジチ合奏団~メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲
♪ MJQ(モダン・ジャズ・カルテッド)『ピラミッド』
♪ プッチーニのオペラ『トゥーランドット』『ラ・ボエーム』
♪ ベートーヴェンとシューベルトの弦楽四重奏曲
♪ モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』
♪ リヒアルト・シュトラウスのオペラ『薔薇の騎士』
♪ ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団~シューベルトの弦楽四重奏曲15番
♪ モーツァルトのピアノとヴァイオリンのためのソナタ
♪ セロニアス・モンク『モンクス・ミュージック』
♪ ストリングスによる「フール・オン・ザ・ヒル」
♪ シューベルトの弦楽四重奏曲13番
♪ ヴェルディのオペラ『エルナーニ』
♪ 古い時代のジャズ~ビリー・ホリデー、クリフォード・ブラウン
♪ ボブ・ディラン『ナッシュヴィル・スカイライン』
♪ ドアーズ『ハートに火をつけて』
♪ ブルース・スプリングスティーン『ザ・リヴァー』
♪ ロバータ・フラックとダニー・ハサウェイ『ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ』
♪ ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ
♪ リヒアルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲
♪ 1980年代のヒットソング~デュラン・デュラン、ヒューイ・ルイス、ABC『ルック・オブ・ラブ』、バーティー・ヒギンズ「キー・ラーゴ」、デボラ・ハリー「フレンチ・キッスイン・イン・ザ・USA」、バナナラマ、ゴーゴーズ
♪ リヒアルト・シュトラウス指揮~ベートーヴェンの交響曲7番
♪ ビートルズ『ラバー・ソウル』
♪ ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』
♪ ピアノの上の楽譜~バッハのインヴェンション、モーツァルトのソナタ、ショパンの小品
♪ バロック音楽~バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディ
♪ アニー・ローリー
♪ ブラームスのシンフォニー
♪ イ・ムジチ合奏団~メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲
♪ MJQ(モダン・ジャズ・カルテッド)『ピラミッド』
♪ プッチーニのオペラ『トゥーランドット』『ラ・ボエーム』
♪ ベートーヴェンとシューベルトの弦楽四重奏曲
♪ モーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』
♪ リヒアルト・シュトラウスのオペラ『薔薇の騎士』
♪ ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団~シューベルトの弦楽四重奏曲15番
♪ モーツァルトのピアノとヴァイオリンのためのソナタ
♪ セロニアス・モンク『モンクス・ミュージック』
♪ ストリングスによる「フール・オン・ザ・ヒル」
♪ シューベルトの弦楽四重奏曲13番
♪ ヴェルディのオペラ『エルナーニ』
♪ 古い時代のジャズ~ビリー・ホリデー、クリフォード・ブラウン
♪ ボブ・ディラン『ナッシュヴィル・スカイライン』
♪ ドアーズ『ハートに火をつけて』
♪ ブルース・スプリングスティーン『ザ・リヴァー』
♪ ロバータ・フラックとダニー・ハサウェイ『ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ』
♪ ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ
♪ リヒアルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲
♪ 1980年代のヒットソング~デュラン・デュラン、ヒューイ・ルイス、ABC『ルック・オブ・ラブ』、バーティー・ヒギンズ「キー・ラーゴ」、デボラ・ハリー「フレンチ・キッスイン・イン・ザ・USA」、バナナラマ、ゴーゴーズ
♪ リヒアルト・シュトラウス指揮~ベートーヴェンの交響曲7番
♪ ビートルズ『ラバー・ソウル』
♪ ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』
♪ ピアノの上の楽譜~バッハのインヴェンション、モーツァルトのソナタ、ショパンの小品
♪ バロック音楽~バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディ
♪ アニー・ローリー
♪ ブラームスのシンフォニー
◆作品中に登場するクルマ一覧
●カローラ・ワゴン
●赤いミニ・クーパー
●赤いプジョー205ハッチバック
●黒い旧型のボルボ・ワゴン
●銀色のジャガーのスポーツ・クーペ
●白いスバル・フォレスター
●黒い日産インフィニティ
●青いトヨタ・プリウス
●ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター
●ホンダの白いミニヴァン
●アウディの紺色のセダン
●赤いミニ・クーパー
●赤いプジョー205ハッチバック
●黒い旧型のボルボ・ワゴン
●銀色のジャガーのスポーツ・クーペ
●白いスバル・フォレスター
●黒い日産インフィニティ
●青いトヨタ・プリウス
●ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター
●ホンダの白いミニヴァン
●アウディの紺色のセダン
◆作品中、シューベルトの弦楽四重奏曲がたびたび登場するので、ウィーン弦楽四重奏団演奏の『弦楽四重奏曲全集』(CD6枚組)を購入しました。
◆この作品の重要なモチーフになっているモーツァルトのオペラ『ドン・ジョバンニ』のDVDを購入しました。
DVD『歌劇《ドン・ジョヴァンニ》全曲』は、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ヘルベルト・グラーフ演出により、1954年ザルツブルク音楽祭で上演されたものです。
DVD『歌劇《ドン・ジョヴァンニ》全曲』は、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ヘルベルト・グラーフ演出により、1954年ザルツブルク音楽祭で上演されたものです。
◆作品中にシーヴァス・リーガルが何度か登場します。久々にスコッチ・ウィスキーが飲みたくなったので、〈シーヴァス・リーガル・ミズナラ12年〉を買いました。