今夜、熊谷達也『鮪立(しびたち)の海』(2017)を読み終えました。
この作品について、Amazon「商品の説明」を引用します。
この作品について、Amazon「商品の説明」を引用します。
宮城県北、三陸海岸の入江にたたずむ町「仙河海」。のちに遠洋マグロ漁業で栄えるこの地で、大正14年に生まれた菊田守一は、「名船頭」として名を馳せた祖父や父のようになることを夢みていた。いつか自分の船で太平洋の大海原に乗り出してカツオの群を追いかけたい――。米軍の艦上戦闘機グラマンとの戦い、敗戦からの復興……。著者ライフワーク「仙河海」サーガの最新作。三陸の海辺には、どんな日常があったのか――。
【感想等】
◆この作品は、仙河海の漁師・菊田守一(もりいち)の7歳(昭和7年)から33歳(昭和33年)までが描かれています。この期間は15年戦争(満州事変・日中戦争・太平洋戦争)と戦後復興という激動の時代であり、そんな中で祖父や父のような優れた船頭になることを夢見て真摯に生きる守一の姿に共感を覚えます。
◆この作品は、仙河海の漁師・菊田守一(もりいち)の7歳(昭和7年)から33歳(昭和33年)までが描かれています。この期間は15年戦争(満州事変・日中戦争・太平洋戦争)と戦後復興という激動の時代であり、そんな中で祖父や父のような優れた船頭になることを夢見て真摯に生きる守一の姿に共感を覚えます。
◆この作品の主要な登場人物は、『浜の甚兵衛』(16)の登場人物とつながっています。そのつながりを見つけた時、熊谷作品を読み続ける喜びを感じます。
・菊田守一:魚問屋マルカネ(金子辰之助)のために土地と家を失った菊田安吉の孫(惣吉の息子)
・後半に登場し、守一の親友になる遠藤征治郎:菅原甚兵衛と遠藤幸江との間にできた子
・守一が乗る遠洋マグロ船第五洋徳丸の船頭・川島洋太郎:菅原甚兵衛のラッコ船に乗り、北洋でオットセイを追った川島賢吾の孫。
・最終章に、静岡県焼津に移ってからの菅原甚兵衛の消息が描かれています。
・菊田守一:魚問屋マルカネ(金子辰之助)のために土地と家を失った菊田安吉の孫(惣吉の息子)
・後半に登場し、守一の親友になる遠藤征治郎:菅原甚兵衛と遠藤幸江との間にできた子
・守一が乗る遠洋マグロ船第五洋徳丸の船頭・川島洋太郎:菅原甚兵衛のラッコ船に乗り、北洋でオットセイを追った川島賢吾の孫。
・最終章に、静岡県焼津に移ってからの菅原甚兵衛の消息が描かれています。
◆守一は、父が船頭、兄が船長を務める向洋丸に乗り、太平洋でのカツオ・マグロ漁に従事します。しかし、太平洋戦争が勃発すると、向洋丸は海軍に徴用され、太平洋上での哨戒活動に当たります。やがて、向洋丸には武装が施され、通称「黒潮部隊」に編入されると、米潜水艦との交戦、グラマンF6Fによる機銃掃射と爆撃によって沈没します。
軍人ではない漁師たちが軍隊組織に組み込まれ、米軍の潜水艦や戦闘機の攻撃にさらされ、多くの命が奪われたことは、とても衝撃的でした。熊谷達也の短編集『山背郷』(02)収録の「モウレン船」にも、海軍に哨戒艇として徴用されたカツオ船が、米軍機の機銃掃射と魚雷によって轟沈し、主人公・菊田勘治らが船の残骸にしがみついて救援を待つ姿が描かれています。
軍人ではない漁師たちが軍隊組織に組み込まれ、米軍の潜水艦や戦闘機の攻撃にさらされ、多くの命が奪われたことは、とても衝撃的でした。熊谷達也の短編集『山背郷』(02)収録の「モウレン船」にも、海軍に哨戒艇として徴用されたカツオ船が、米軍機の機銃掃射と魚雷によって轟沈し、主人公・菊田勘治らが船の残骸にしがみついて救援を待つ姿が描かれています。
◆熊谷作品には「家督」という言葉がしばしば登場します。「跡継ぎ」の意味ですが、東北地方、あるいは宮城県では現在も使われている言葉なのでしょうか。僕の住んでいる地域では「家督」という言葉は耳にしません。
守一は真知子と愛し合いますが、お互いが「家督」のために、別れることになります。守一はそれを何年も引きずりますが、真知子の変わり身の早さには驚きます。でも、真知子がそうせざるを得なかった理由は十分理解できます。
守一は真知子と愛し合いますが、お互いが「家督」のために、別れることになります。守一はそれを何年も引きずりますが、真知子の変わり身の早さには驚きます。でも、真知子がそうせざるを得なかった理由は十分理解できます。
◆主な登場人物(登場順)
・菊田守一
・菊田惣吉
・金子辰之
・金子辰巳
・菊田惣一
・小野寺保
・森本兵曹長
・早坂真知子
・菊田みつゑ
・遠藤征治郎
・川島洋太郎
・川島賢吾
・大幡清子
・美和子
・菊田守一
・菊田惣吉
・金子辰之
・金子辰巳
・菊田惣一
・小野寺保
・森本兵曹長
・早坂真知子
・菊田みつゑ
・遠藤征治郎
・川島洋太郎
・川島賢吾
・大幡清子
・美和子
◆気になった文章
・惣吉が守一に語った言葉(P7357)
「したがら馬鹿だって言ったのだ。ある程度は自分のことを客観視できねば、本当にいい船頭にはなれねえど。守の一番悪(わり)ぃ部分は、必要以上に自分を過小評価するところだ。己惚(うぬぼ)れるのはまずいけんと、もっと自信を持っていがすぞ。ずいぶん前の話になるけどや、洋太郎と同じことを惣一も語ってだっけがらに」
・惣吉が守一に語った言葉(P7357)
「したがら馬鹿だって言ったのだ。ある程度は自分のことを客観視できねば、本当にいい船頭にはなれねえど。守の一番悪(わり)ぃ部分は、必要以上に自分を過小評価するところだ。己惚(うぬぼ)れるのはまずいけんと、もっと自信を持っていがすぞ。ずいぶん前の話になるけどや、洋太郎と同じことを惣一も語ってだっけがらに」