今日、スチュアート・ウッズ(1938-)の長編第2作『風に乗って』(1983、真野明裕訳)を読み終えました。この作品はまた、『警察署長』(1981)に続く、ウィル・リー・シリーズの第2作でもあります。
この作品について、「訳者あとがき」の一部を引用します。
この作品について、「訳者あとがき」の一部を引用します。
作者は1973年にアイルランドに渡って、広告関係の仕事をするかたわら、『警察署長』の執筆に取り組んでいたが、途中でヨット熱に取りつかれ、執筆を中断して、セイリングに熱中した。ついに1976年には〈オブザーヴァー〉主催の大西洋単独横断レースに参加して、完走し、そのときの経験とレースの模様をつづった彼の最初の著書Blue Water, Green Skipper瓩鰺眷上梓した。さらに1979年には知る人ぞ知るファーストネット・レースに参加して、好成績を残したが、このレース自体は多くの参加艇が沈み、選手15名が死亡するという惨憺たるものだった。
作品の舞台となるアイルランドの背景描写や、ヨット造りとセイリングの場面などは作者のそんな体験によってしっかりと裏打ちされているようである。
主人公のウィル・リーは、『警察署長』の主要人物の一人ビリー・リーの息子という設定になっている。ウィルは自分のアイデンティティを見出しかね、なにごとにも正面切って取り組むことを避けて適当に生きてきた青年である。
コニー、ジェイン、アニーと、美女とみれば片っ端から「いい関係」になり、そのくせことが自分の思惑と食いちがうと傷ついて、被害者意識にまみれるといういい気さかげんで、日頃人生の不如意さを噛みしめているおじさん族からすると、「いいかげんにしやがれ」と言いたくなるところがある。いや、あったのである。世の中そうそう甘くはなく、彼は青春の冒険に乗り出したのもつかのま、偶然の出会いから苦難と憎悪の渦に巻きこまれる。現実の冷たい荒波にもみにもまれ、大人の汚なさとしたたかさを存分に思い知らされる。ウィルはいやおうなしに現実との対決と決断を迫られ、半ば逃げ腰でもがきながらも徐々に自己発見をとげ、一人前の男に脱皮して行く。この意味では本書はアメリカ版の教養小説とも言えるし、主人公の精神の成長過程が作品の大きなテーマであることはまちがいない。
そしてまた、この本は、冒頭にもふれたように、波乱万丈の冒険小説であり、スリラーであり、また海洋小説でもあるという多様な要素を持っている。
作品の舞台となるアイルランドの背景描写や、ヨット造りとセイリングの場面などは作者のそんな体験によってしっかりと裏打ちされているようである。
主人公のウィル・リーは、『警察署長』の主要人物の一人ビリー・リーの息子という設定になっている。ウィルは自分のアイデンティティを見出しかね、なにごとにも正面切って取り組むことを避けて適当に生きてきた青年である。
コニー、ジェイン、アニーと、美女とみれば片っ端から「いい関係」になり、そのくせことが自分の思惑と食いちがうと傷ついて、被害者意識にまみれるといういい気さかげんで、日頃人生の不如意さを噛みしめているおじさん族からすると、「いいかげんにしやがれ」と言いたくなるところがある。いや、あったのである。世の中そうそう甘くはなく、彼は青春の冒険に乗り出したのもつかのま、偶然の出会いから苦難と憎悪の渦に巻きこまれる。現実の冷たい荒波にもみにもまれ、大人の汚なさとしたたかさを存分に思い知らされる。ウィルはいやおうなしに現実との対決と決断を迫られ、半ば逃げ腰でもがきながらも徐々に自己発見をとげ、一人前の男に脱皮して行く。この意味では本書はアメリカ版の教養小説とも言えるし、主人公の精神の成長過程が作品の大きなテーマであることはまちがいない。
そしてまた、この本は、冒頭にもふれたように、波乱万丈の冒険小説であり、スリラーであり、また海洋小説でもあるという多様な要素を持っている。
【感想等】
◆この作品は、プロローグ+63節で構成されています。「ぼく」(ウィル・リー)が語るメイン・ストーリーがあり、ところどころにテロリストらの物語が挿入されます。やがて、その2つの物語は一つになり、クライマックスを迎えます。
◆感想は、上に引用した「訳者あとがき」ですべて言い尽くされているように思います。
◆「ぼく」(ウィル・リー)は、マーク・ペンバトン=ロビンスンの大型ヨット建造に協力します。そのヨットは、彼らが航海中に聴いていたアントニオ・カルロス・ジョビンの曲から「ウェイヴ」と名付けられます。「ウェイヴ」は彼のアルバム『Wave(波)』(1967)に収録されています。
◆この作品は、プロローグ+63節で構成されています。「ぼく」(ウィル・リー)が語るメイン・ストーリーがあり、ところどころにテロリストらの物語が挿入されます。やがて、その2つの物語は一つになり、クライマックスを迎えます。
◆感想は、上に引用した「訳者あとがき」ですべて言い尽くされているように思います。
◆「ぼく」(ウィル・リー)は、マーク・ペンバトン=ロビンスンの大型ヨット建造に協力します。そのヨットは、彼らが航海中に聴いていたアントニオ・カルロス・ジョビンの曲から「ウェイヴ」と名付けられます。「ウェイヴ」は彼のアルバム『Wave(波)』(1967)に収録されています。
◆登場人物(登場順)
・マーティンデイル
・ウィル・リー(ウィリアム・H・リー4世)
・ウォリス・ヘンリー
・ビリー・リー
・パトリシア・リー
・コニー(コンセプタ・ライドゥン)
・デニー・オウドヌル
・ズューナル・オウドヌル
・アニー(アナ・ペンバトン=ロビンスン)
・マーク・ペンバトン=ロビンスン
・デリク・スラッシャー
・マイケル・ピアス
・ピーター=パトリック・クールモア卿
・フィンバー・オウリアリ
・メイヴ(シスター・メアリ・マーガレット)
・レッド・オウマハニ
・ハリー・オウリアリ
・レディ・ジェイン・バークリー
・パトリック・フィッツジェラルド・ピアス
・ニッキー
・アルフレッド・マカダム(ブラッキー)
・メイジャー・プリムローズ
・マルキャヒ
・アンドルー・フォーティスキュー
・ロズ・フォーティスキュー
・ジョン・アスリット
・マーティンデイル
・ウィル・リー(ウィリアム・H・リー4世)
・ウォリス・ヘンリー
・ビリー・リー
・パトリシア・リー
・コニー(コンセプタ・ライドゥン)
・デニー・オウドヌル
・ズューナル・オウドヌル
・アニー(アナ・ペンバトン=ロビンスン)
・マーク・ペンバトン=ロビンスン
・デリク・スラッシャー
・マイケル・ピアス
・ピーター=パトリック・クールモア卿
・フィンバー・オウリアリ
・メイヴ(シスター・メアリ・マーガレット)
・レッド・オウマハニ
・ハリー・オウリアリ
・レディ・ジェイン・バークリー
・パトリック・フィッツジェラルド・ピアス
・ニッキー
・アルフレッド・マカダム(ブラッキー)
・メイジャー・プリムローズ
・マルキャヒ
・アンドルー・フォーティスキュー
・ロズ・フォーティスキュー
・ジョン・アスリット
◆気になった文章
・「まあ、それはもうすんだことだ。噂ってのはよりによってまずいところには必ず広まるもんさ。第二段階はダメージ・コントロール(被害対策)だ」
「ダメージ・コントロール?」
「海軍用語さ。艦に一発食らったら、どうして食らったのかとくよくよしてちゃだめだ。浸水を防ぐためにできるだけのことをするまでだ」(P148)
・「まあ、それはもうすんだことだ。噂ってのはよりによってまずいところには必ず広まるもんさ。第二段階はダメージ・コントロール(被害対策)だ」
「ダメージ・コントロール?」
「海軍用語さ。艦に一発食らったら、どうして食らったのかとくよくよしてちゃだめだ。浸水を防ぐためにできるだけのことをするまでだ」(P148)
◆作品中に登場する車一覧
・ランド・ローヴァ
・ミニ・クーパー
・紺色のメルセデス
・ウーズリー
・フォードのヴァン
・ライト・グリーンのフォルクスワーゲン
・フォード・エステート
・シトロエン
・緑色のヴァン
・緑色のフォルクスワーゲン
・BMW
・レンジ・ローヴァ
・フォード・コルティナ
・ヴォクスホールのステーション・ワゴン
・シヴォレー
・ランド・ローヴァ
・ミニ・クーパー
・紺色のメルセデス
・ウーズリー
・フォードのヴァン
・ライト・グリーンのフォルクスワーゲン
・フォード・エステート
・シトロエン
・緑色のヴァン
・緑色のフォルクスワーゲン
・BMW
・レンジ・ローヴァ
・フォード・コルティナ
・ヴォクスホールのステーション・ワゴン
・シヴォレー
【参考】アイルランド
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