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池波正太郎『雲霧仁左衛門』を読みました。

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 今日、池波正太郎(1923-90)の『雲霧仁左衛門』(1974)を読み終えました。
 以前、彼の『真田太平記』(1974-82)を読んだ時、その小説世界にどっぷりつかり、楽しい日々を過ごしました。また、そんな日々に出会いたくて、『鬼平犯科帳』シリーズ(1967-89)か、『剣客商売』シリーズ(1972-89)を読もうと思います。でも、その前にちょっと小手調べと思い、『雲霧仁左衛門』を読みました。
 この作品について、ブックカバー裏表紙の解説を引用します。
 神出鬼没・変幻自在の怪盗・雲霧仁左衛門。政争渦巻く8代将軍・吉宗の治世、江戸市中で、一人の殺傷もなく1万両を盗み出すという離れ業を成し遂げた雲霧一味は、次の狙いを尾張・名古屋の豪商・松屋吉兵衛方に定める。雲霧の命により、七化けのお千代は、4年前に妻を亡くした吉兵衛に近づく。金蔵をめざして、江戸から名古屋へ盗賊一味の影が走り、火付盗賊改方の一団が追う。(前編)

 尾張・名古屋城下で、5千両余を盗み出し、一人も負傷することなく逃亡した雲霧一味は、再び江戸で、数年後の盗みばたらきに備えて暗躍をはじめる。一方、何度も雲霧一味に煮え湯をのまされた火付盗賊改方と町奉行所は、一味の探索に執念を燃やし、肉薄する・・・。雲霧仁左衛門は、胸に秘めた最後の盗(つと)めばたらきを成し遂げられるか? 稀代の大盗賊・雲霧一代の神出鬼没の大活躍。(後編)

【感想等】
◆前編の終わり、雲霧一味が名古屋の豪商〔松屋吉兵衛〕方に盗みに入る場面と、尾張藩の隠密が幕府隠密〔鍵屋又兵衛〕方を襲撃する場面が交互に描かれています。2つの場面を交互に描くパラレル進行の手法は、読者をして先へ先へと読み進めさせます。
 面白くて、何日も午前3時、4時まで読み耽ってしまいました。

◆雲霧仁左衛門の盗みには彼独自のやり方があり、それがかっこいいから、知らず知らずのうちに、彼に肩入れしてしまいます。
 練りに練った計画があり、周到な人員配置があり、果敢な機動力を発揮して盗みを成し遂げる。誰一人傷つけることなく、眠っている人々の一人も目覚めさせることなく、大金を奪い去る。
 盗みの装束もかっこいいと思います。「裾を端折った黒木綿の筒袖を着込み、黒の股引・足袋、草鞋ばきの盗み装束に身をかため、その背中には灰色の雲の意匠が染めぬいてある」「忍び頭巾は黒羽二重。腰には脇差を差しこみ、細引き縄をつけている」(後編P526)

◆雲霧一味にしても、火付盗賊改方にしても、結束して事に当たる者たちの中に裏切り者が出るという点は、共通していました。
 雲霧仁左衛門を裏切った山猫の三次。火付盗賊改方を裏切り、雲霧一味と内通した与力・岡田甚之助。彼らの動機は金と女でした。そして、どちらも悲惨な最期を迎えました。

◆登場人物(登場順)
 雲霧仁左衛門率いる盗賊団と、安部式部を長官とする火付盗賊改方。この相反する2つの組織は、目的は正反対ですが、とてもよく似ていると思います。いずれも鉄の規律を持ち、固い人間的な絆で結ばれているからです。
 本当は主な登場人物だけのつもりでしたが、それぞれがそれぞれの役割を懸命に果たそうとしているので、それらをおろそかに出来ないと思い、登場人物をほぼ書き出しました。
〈雲霧一味〉
・七化けのお千代
・三坪の伝次郎
・因果小僧六之助
・木鼠の吉五郎(小頭)
・黒塚のお松
・山猫の三次
・治平
・おもん
・桐屋五助
・桐屋長治
・雲霧仁左衛門(首領)
・七兵衛
・おくう
・洲走りの熊五郎
・忠吉
・三右衛門
・漁師・留造(沖右衛門)
・井ノ岡の平吉
・伊平
・小平
・煙管師・利助
・櫛屋の房蔵
・信濃屋伊之助
・鍛冶屋の定松
・座頭・富の市
・お兼
・大工小僧七松
・蔵之助(辻蔵之助)
・三好屋音八
・大貫太四郎
・喜兵衛

〈火付盗賊改方〉
・山之宿の政蔵(目明し)
・山田藤兵衛(筆頭与力)
・高瀬俵太郎(同心)
・安部式部信旨(長官)
・岡田甚之助(与力)
・井口源助(同心)
・津山庄七(同心)
・岩吉(密偵)
・豊治郎(密偵)
・桶屋の安太郎(密偵)
・柳助次郎(同心)
・大柴伝三郎(同心)
・松崎平吾(同心)
・山本忠作(同心)
・鉄五郎(密偵)
・北島三郎兵衛(与力)
・木村与四郎(同心)
・川野一平(同心)
・留吉(密偵)
・永島伝八郎(同心)
・中田弥之助(同心)
・片岡十蔵(同心)
・松浦由太郎(同心)
・内田孫吉(同心)
・小島源八郎(与力)
・斎藤袈裟次郎(同心)
・井口吉之介(同心)
・村松友治郎(同心)
・宗吉(密偵)

〈その他〉
・松屋吉兵衛
・鹿伏の留次郎
・駒寺の利吉
・関口雄介
・植村栄三郎
・鈴木又七郎
・孫十
・櫓の福右衛門
・棚釜の仁三郎
・おきね
・鍵屋又兵衛
・蒔絵師直四郎
・越後屋善右衛門
・由之助

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