最近、村上氏は既刊の短編小説集から選んだ作品にカット・メンシックのイラストを加えて単行本化する作業を続けています。『ねむり』(2010)や『パン屋を襲う』(2013)、『図書館奇譚』(2014)です。
先月刊行の『図書館奇譚』は短編小説集『カンガルー日和』(1983)から選んだものですが、僕はこういう手法はあまり好きではありません。良く言えば「カット・メンシックとのコラボレーションにより、作品に新たな生命を吹き込む」となるのでしょうが、僕はひねくれているせいでしょうか、「ちょっと色づけして、二番煎じで金を稼ぐ」などと思ってしまいます。
先月刊行の『図書館奇譚』は短編小説集『カンガルー日和』(1983)から選んだものですが、僕はこういう手法はあまり好きではありません。良く言えば「カット・メンシックとのコラボレーションにより、作品に新たな生命を吹き込む」となるのでしょうが、僕はひねくれているせいでしょうか、「ちょっと色づけして、二番煎じで金を稼ぐ」などと思ってしまいます。
きっかけはどうあれ、久々に『カンガルー日和』を手にしたので、全作品を読んでみました。著者が「あとがき」で「僕としては他人の目をあまり気にせずに、のんびりとした気持ちで楽しんで連載をつづけることができた。」と述べているように、かなり自由にのびのびと書いていると思います。フィリップ・マーロウ風の私立探偵が登場する「サウスベイ・ストラット」なんて、楽しくてにやけながら読んでしまいます。羊男が登場する「図書館奇譚」はまさに著者の真骨頂というべき作品で、前言を撤回して単行本『図書館奇譚』を買いたくなりました。トホホ。
【収録作品】
◆カンガルー日和 ◆4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて ◆眠い ◆タクシーに乗った吸血鬼 ◆彼女の町と、彼女の緬羊 ◆あしか祭り ◆鏡 ◆1963/1982年のイパネマ娘 ◆バート・バカラックはお好き? ◆5月の海岸線 ◆駄目になった王国 ◆32歳のデイトリッパー ◆とんがり焼の盛衰 ◆チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏 ◆スパゲティーの年に ◆かいつぶり ◆サウスベイ・ストラット――ドゥービー・ブラザーズ「サウスベイ・ストラット」のためのBGM ◆図書館奇譚
◆カンガルー日和 ◆4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて ◆眠い ◆タクシーに乗った吸血鬼 ◆彼女の町と、彼女の緬羊 ◆あしか祭り ◆鏡 ◆1963/1982年のイパネマ娘 ◆バート・バカラックはお好き? ◆5月の海岸線 ◆駄目になった王国 ◆32歳のデイトリッパー ◆とんがり焼の盛衰 ◆チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏 ◆スパゲティーの年に ◆かいつぶり ◆サウスベイ・ストラット――ドゥービー・ブラザーズ「サウスベイ・ストラット」のためのBGM ◆図書館奇譚
【参考】(著者による「あとがき」を一部引用)
ここに集めた23編の短い小説――のようなもの――は81年4月から83年3月にわたって、僕がある小さな雑誌(引用者注:『トレフル』)のために書きつづけたものである。この雑誌は一般書店の店頭には出ない種類のものなので、僕としては他人の目をあまり気にせずに、のんびりとした気持ちで楽しんで連載をつづけることができた。 それぞれの作品の長さは400字づめにして8枚から14枚くらいである。「図書館奇譚」だけが唯一の例外として6回連続の長いものになった。