このブックカバー、「血」のようだと思っていましたが、開いてみたらかき氷(イチゴ)の写真でした。
今日、夏目漱石の『こころ』(1914)を読み終え、漱石の前後期三部作6冊を読了しました。
『こころ』は「上 先生と私」、「中 両親と私」、「下 先生と遺書」の3部構成になっています。「上」「中」では学生の「私」が語り手となり、「下」では「先生」から「私」への手紙という形式をとりながら、「先生」が語り手となっています。
『こころ』は「上 先生と私」、「中 両親と私」、「下 先生と遺書」の3部構成になっています。「上」「中」では学生の「私」が語り手となり、「下」では「先生」から「私」への手紙という形式をとりながら、「先生」が語り手となっています。
◆「K」はなぜ自殺したのか? 「先生」は「下 五十三」で次のように推測しています。
同時に私はKの死因を繰り返し繰り返し考えたのです。その当座は頭がただ恋の一字で支配されていた所為(せい)でもありましょうが、私の観察は寧ろ簡単でしかも直線的でした。Kは正(まさ)しく失恋のために死んだものとすぐ極(き)めてしまったのです。しかし段々落ち付いた気分で、同じ現象に向ってみると、そう容易(たやす)くは解決が着かないように思われて来ました。現実と理想の衝突、――それでもまだ不充分でした。私は仕舞にKが私のようにたった一人で淋(さむ)しくって仕方がなくなった結果、急に所決したのではなかろうかと疑がい出しました。そうしてまた慄(ぞっ)としたのです。私もKの歩いた路を、Kと同じように辿っているのだという予覚が、折々風のように私の胸を横過(よこぎ)り始めたからです。
同時に私はKの死因を繰り返し繰り返し考えたのです。その当座は頭がただ恋の一字で支配されていた所為(せい)でもありましょうが、私の観察は寧ろ簡単でしかも直線的でした。Kは正(まさ)しく失恋のために死んだものとすぐ極(き)めてしまったのです。しかし段々落ち付いた気分で、同じ現象に向ってみると、そう容易(たやす)くは解決が着かないように思われて来ました。現実と理想の衝突、――それでもまだ不充分でした。私は仕舞にKが私のようにたった一人で淋(さむ)しくって仕方がなくなった結果、急に所決したのではなかろうかと疑がい出しました。そうしてまた慄(ぞっ)としたのです。私もKの歩いた路を、Kと同じように辿っているのだという予覚が、折々風のように私の胸を横過(よこぎ)り始めたからです。
「先生」は、実家から勘当され窮地に陥った「K」を自分の下宿に住まわせます。しかし、「K」が下宿の御嬢さんへの思いを「先生」に打ち明けると、「先生」は「K」を出し抜き、御嬢さんとの結婚を決めてしまいます。「K」は「先生」との友情や御嬢さんへの思いに、生きることへの一縷の希望を見いだしていたのかもしれません。「K」はその両方を一度に失ったので死を選んだように思います。
「先生」にしても「K」にしても恋愛下手です。「先生」は御嬢さんが好きなら「K」が御嬢さんに関心を持つ前に「K」に自分の気持ちを伝えておくべきだし、「K」も「先生」の気持ちを察しないといけません。これは時代のせいですかね。
「先生」にしても「K」にしても恋愛下手です。「先生」は御嬢さんが好きなら「K」が御嬢さんに関心を持つ前に「K」に自分の気持ちを伝えておくべきだし、「K」も「先生」の気持ちを察しないといけません。これは時代のせいですかね。
◆「先生」の遺書の最後の部分。
私は私の過去を善悪ともに他(ひと)の参考に供する積りです。しかし妻だけはたった一人の例外だと承知して下さい。私は妻には何にも知らせたくないのです。妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存して置いて遣りたいのが私の唯一の希望なのですから、私が死んだ後でも、妻が生きている以上は、あなた限りに打ち明けられた私の秘密として、すべてを腹の中にしまっておいて下さい。
私は私の過去を善悪ともに他(ひと)の参考に供する積りです。しかし妻だけはたった一人の例外だと承知して下さい。私は妻には何にも知らせたくないのです。妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存して置いて遣りたいのが私の唯一の希望なのですから、私が死んだ後でも、妻が生きている以上は、あなた限りに打ち明けられた私の秘密として、すべてを腹の中にしまっておいて下さい。
「K」や自身の自殺について何も語らないのは、本当に妻のためになるのでしょうか? 妻としては一生理由が分からなくて、苦しむことになるかもしれません。「K」の自殺について思うところを正直に話し、苦しみながらも二人で生きて行くことは無理だったのでしょうか?
◆「先生」の叔父が父の遺産を横領したこと、「先生」が御嬢さんをめぐって「K」を出し抜いたこと。どちらも世の中にはたくさんあることです。
【参考:あらすじ】(Wikipediaより、一部改編)
◇時は明治末期。夏休みに鎌倉へ旅行をしていた「私」は鎌倉に来ていた「先生」と出会い交流を始め、東京に帰った後も「先生」の家に出入りするようになる。「先生」は奥さんと静かに暮らしていた。「先生」は「私」に何度も謎めいた、そして教訓めいたことを言う。「私」は、「先生」に過去を打ち明けるように迫ったところ来るべき時に過去を話すことを約束した。
◇「私」は大学を卒業後、実家に帰省した。病気が重かった父親は、ますます健康を損ない、「私」は東京へ帰る日を延ばした。実家に親類が集まり、父の容態がいよいよ危なくなってきたところへ、「先生」から分厚い手紙が届く。手紙が「先生」の遺書だと気づいた「私」は、東京行きの汽車に飛び乗った。
◇「先生」の手紙には謎に包まれた彼の過去が綴られていた。「K」や「お嬢さん」らとの関係とその顛末、「先生」が「私」に語った謎めいた言葉たちの真相が明かされる。
◇時は明治末期。夏休みに鎌倉へ旅行をしていた「私」は鎌倉に来ていた「先生」と出会い交流を始め、東京に帰った後も「先生」の家に出入りするようになる。「先生」は奥さんと静かに暮らしていた。「先生」は「私」に何度も謎めいた、そして教訓めいたことを言う。「私」は、「先生」に過去を打ち明けるように迫ったところ来るべき時に過去を話すことを約束した。
◇「私」は大学を卒業後、実家に帰省した。病気が重かった父親は、ますます健康を損ない、「私」は東京へ帰る日を延ばした。実家に親類が集まり、父の容態がいよいよ危なくなってきたところへ、「先生」から分厚い手紙が届く。手紙が「先生」の遺書だと気づいた「私」は、東京行きの汽車に飛び乗った。
◇「先生」の手紙には謎に包まれた彼の過去が綴られていた。「K」や「お嬢さん」らとの関係とその顛末、「先生」が「私」に語った謎めいた言葉たちの真相が明かされる。