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又吉直樹『火花』を読みました。(再)

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今日、又吉直樹の『火花』を読みました。今年1月、文芸誌『文學界』2月号掲載時に読んでいたので、今回はストーリー展開を気にせずにじっくり読むことができました。
主人公の幼時のエピソードや東京の街の風景、芸人の世界、……。創作部分も多いとは思いますが、この作品のベースは著者の経験が中心になっているように思います。そう考えると、この作品は彼のこれまでの人生の集大成のようにもみえてきます。となると、次を書くのはたいへんそうですが、彼の才能ならたぶん大丈夫だと思います。

◆気に入った文章がたくさんありました。その中からひとつだけ引用しておきます。スパークスの解散ライブに関するネットニュースへのコメントを読んだ主人公の言葉です。
 僕は小さな頃から漫才師になりたかった。僕が中学時代に相方に出会わなかったとしたら、僕は漫才師になれただろうか。漫才だけで食べていける環境を作れなかったことを、誰かのせいにするつもりはない。ましてや、時代のせいにするつもりなど更々ない。世間からすれば、僕達は二流芸人にすらなれなかったかもしれない。だが、もしも「俺の方が面白い」とのたまう人がいるのなら、一度で良いから舞台に上がってみてほしいと思った。「やってみろ」なんて偉そうな気持など微塵もない。世界の景色が一変することを体感してほしいのだ。自分が考えたことで誰も笑わない恐怖を、自分が考えたことで誰かが笑う喜びを経験してほしいのだ。
 必要がないことを長い時間かけてやり続けることは怖いだろう? 一度しかない人生において、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦するのは怖いだろう。無駄なことを排除するということは、危険を回避するということだ。臆病でも、勘違いでも、救いようのない馬鹿でもいい、リスクだらけの舞台に立ち、常識を覆すことに全力で挑める者だけが漫才師になれるのだ。それがわかっただけでもよかった。この長い年月をかけた無謀な挑戦によって、僕は自分の人生を得たのだと思う。
◆前回の感想等は以下を参照してください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kazukazu560506i/55389711.html

◆この作品には高円寺や吉祥寺、上石神井、渋谷、下北沢、池尻大橋などの東京の街が登場します。参考に東京の鉄道路線図を添付しておきます。
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