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中村文則『悪意の手記』を読みました。

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今日、中村文則の『悪意の手記』(04)を読み終えました。
ストーリー等については、以下の通りです。
 死に至る病に冒されたものの、奇跡的に一命を取り留めた男。生きる意味を見出せず全ての生を憎悪し、その悪意に飲み込まれ、ついに親友を殺害してしまう。だが人殺しでありながらもそれを苦悩しない人間の屑として生きることを決意する――。人はなぜ人を殺してはいけないのか。罪を犯した人間に再生は許されるのか。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家が究極のテーマに向き合った問題作。(ブックカバー裏表紙より)

◆この作品は、『手記1』『手記2』『手記3』という3つの手記で構成されています。
◆主人公(手記の筆者)は親友を殺してしまったことをどう乗り越えるか葛藤を続けています。そんな彼が夢か幻覚の中で、次のような言葉を聞き、さらに苦悩を深めていきます。
君は人を殺した。あんな善良な、しかも君の親友だった少年を殺した。若い命を、その将来の全てを叩き潰したんだ。そのせいで、彼の母親の人生まで終わらせた。彼女は発狂して、入院したんだ。どうだい? そんなことをしでかした人間が、救われていいのかい? 他人にそんな最大の苦痛を味わわせた張本人が、考福になっていいのかい? 君は、救われていく自分を、そのまま受け入れていくのかい? だとしたら、君は本当の悪魔だよ。いや、悪魔以下だよ。悪魔は自分が悪魔であることを少なくとも自覚して、暖かいものなんか望んだりしないのだから。(P105-106)
◆やがて、主人公はリツ子という女性の復讐殺人に荷担しますが、決行の直前に中止します。著者のデビュー作『銃』(02)や第2作『遮光』(03)はとても後味の悪いラストだったので、第3作にあたるこの作品のラストには少しホッとさせられました。

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