今日、『尾崎放哉全句集』(村上護編)を読み終えました。
先日、又吉直樹のエッセイ集『東京百景』を読んでいたら、尾崎放哉の「自分をなくしてしまつて探して居る」という句が引用されていました。
僕は4月に異動しますが、これまで2年毎の異動を2回繰り返していたので何ら感慨はないと思っていたのに、この句を読んだら急に寂しさを覚えました。
以下、気になった句を引用します。
先日、又吉直樹のエッセイ集『東京百景』を読んでいたら、尾崎放哉の「自分をなくしてしまつて探して居る」という句が引用されていました。
僕は4月に異動しますが、これまで2年毎の異動を2回繰り返していたので何ら感慨はないと思っていたのに、この句を読んだら急に寂しさを覚えました。
以下、気になった句を引用します。
機‘枩ぐ文紂並臉13年~15年)
省略 → http://blogs.yahoo.co.jp/kazukazu560506i/54777484.html
供∥世の時代
◆定型俳句時代(明治33年~大正3年)
病いへずうつうつとして春くるゝ
山茶花やいぬころ死んで庭淋し
別れ来て淋しさに折る野菊かな
椿咲く島へ三里や浪高し
◆自由律俳句時代(大正4年~12年)
今日一日の終りの鐘をきゝつゝあるく
夢さめし眼をひたと闇にみひらけり
はるばる来にける旅なりし山山
ぢつと子の手を握る大きなわが手
たそがれの浪打ぎはをはるかに来けり
掘ゞ膵董並臉14年~15年)
今日来たばかりの土地の犬となじみになつてゐる
を世話になる寺をさがして歩くつゝじがまつ盛だ
いつからか笑つたことの無い顔をもつて居る
下手な張りやうの儘で障子がかわいてしまつた
考え事をしてゐる田にしが歩いて居る
するどい風の中で別れようとする
雑踏のなかでなんにも用の無い自分であつた
冷酒の酔のまはるをぢつと待つて居る
冷え切つた番茶の出がらしで話さう
椿の墓道を毎朝掃くことがうれしい
傘をくるくるまはして考え事してゐた
好きな花の椿に絶えず咲かれて住む
久々海へ出て見る風吹くばかり
蛙ころころとなく火の用心をして寝る
葉桜の下で遊びくたびれて居る
言ふ事があまり多くてだまつて居る
母の無い児の父であつたよ
雨の日は遠くから灯台見て居る
風がどこに行つてしまつたか海
ひよいと呑んだ茶碗の茶が冷たかつた
数えて居るうちに鳩の数がまぎれて来る
づいぶん強い風であつた柘榴が落ちない
洗濯竿にはわがさるまたが一つ
自分をなくしてしまつて探して居る
とんぼが淋しい机にとまりに来てくれた
色々思はるゝ蚊帳のなか虫等と居る
蚤とぶ朝の畳の裸一貫
松かさも火にして豆が煮えた
御仏の灯を消して一人の蚊帳にはいる
さゝつたとげを一人でぬかねばならぬ
待つて居る手紙が来ぬ炎天がつゞく
まつくらなわが庵の中に吸はれる
今ばん芋を煮ようか茄子を煮ようかとのみ
扇子を大事にし大事にし蠅を叩く
淋しくなれば木の葉が躍つて見せる
叱ればすぐ泣く児だと云つて泣かせて居る
あく迄満月をむさぼり風邪をひきけり
山ふところの風の饒舌
投げ出されたやうな西瓜が太つて行く
此の釘打つた人の力の執念を抜く
海風に筒抜けられて居るいつも一人
海風べうべうと町までの夜道
朝から曇れる日の白木槿に話しかける
うつかり気が付かずに居た火鉢に模様があつた
アノ婆さんがまだ生きて居たお盆の墓道
葡萄喰べあいたとハガキよこした
藤棚から青空透かして一日居る
犬の顔つくづく見て居るひまがあつた
一疋の蚤をさがして居る夜中
雨の糸瓜見て家にばかり居る
ぴつたりしめた穴だらけの障子である
さよならなんべんも云つて別れる
あけがたとろりとした時の夢であつたよ
静かなる日の名も知らぬ花咲きたり
一番遠くへ帰る自分が一人になつてしまつた
思ひ出せない顔に挨拶して居る
欠伸して昼の月見付けた
疲れたこんな重たい足があつた
腰を下ろした石のまんまで暮れとる
お客さんにこの風を御馳走しよう
お祭にあいて海に来て居る女だ
涼しうなつた蠅取紙に蠅が身を投げに来る
ころりと横になれば蜘蛛の巣が見える
秋山海が見えるところへ腰を下ろす
二階の障子はりかへて海風の家あり
木槿一日うなづいて居て暮れた
久しぶりに庵を出かける猫が見て居る
何がたのしみに生きてると問はれて居る
たつたひと晩でお別れか
すきな海を見ながら郵便入れに行く
すきな海が荒るればわが心痛む
子供あやす顔で泣かれてしまつた
久し振りの雨の雨だれの音
梨子を一つあすの分に残して置かう
今夜も星がふるやうな仏さまと寝ませう
お粥ふつふつ煮える音の寐床に居る
淋しいから寐てしまをう
縁の下一つ啼く虫ある今宵よ
大根ぶらさげて立つなんと大きな夕日だ
眼が覚めた寐床の上に天井が無い
あごにさわる手にひげがのびて居る
鍋の底の穴を大空に探す
針の穴の青空に糸を通す
入れものが無い両手で受ける
咳をしても一人
きつとうまいぞ泥だらけの大根
冷めたさ握つて居た手のひら
木の葉まひ上りどんどん暮れる
章魚をもらつた朝まつ赤に煮あげた
鰌きゆうきゆうなかせて割いとる
小さい窓から首突き出して晩秋
ひどい風だどこ迄も青空
禿げあたまを蠅に好かれて居る
恋心四十にして穂芒
なんと丸い月が出たよ窓
落葉掃きたくない晩もある
青空の下で話して別れた
雪かく朝の小さい手もかりる
南天うつむかして夜の雪やむ
しやがめば顔に近きだりやの花
山茶花が咲いたのでよい庭だ
少し開きかけた椿をもらつた
一日歩いて来た山道の残雪もあつた
水仙が炭俵の上に置いてあつた
とつくに明けて居る元日起きて来て座る
ゆつくり暮れて行く籐椅子
内庭の空見上げては本読む
空を見る事が好きな妻であつた
柱の水仙が咲いた咲いた咲いた
硝子窓に呼吸(イキ)で書いた絵が消えた
石ころ幾つも海へ投げあきてもどる
向ふの山に陽のあるうちを急ぐ
はやり唄うたつて児をそだてる
寒ン空シヤツポがほしいな
沈丁花の匂ひ夜中思ひ出してゐる
すり鉢が無いすりこ木が無い
検∥世の時代・拾遺
◆定型俳句時代
石塔にもたれて月を眺めけり
波際に霧晴るゝ迄佇みぬ
暮るゝ日や落葉の上に塔の影
風邪に居て障子の内の小春かな
木苺を貪り食へば山淋し
五六本折れば濃き黄や女郎花
寺多き谷中の鶏頭鶏頭哉
秋日和四国の山は皆ひくし
秋の雨朝より障子しめきりつ
春寒し、山の青きを見て居れば
◆自由律俳句時代
橋を渡る時星が一斉に光れり
麦のびたり郵便夫と話しゆく
とんぼ一つ風にさからふ水面なれ
虫高々と鳴き出でぬ遅く湯に行く
物思ひつゝ来たり塔の真下なり
日暮れ船が皆火をもやし下る
草鞋はきしめてさゝやかな旅に立つ
駅の草花が赤い雨の日なり
児等が植ゑしへうたんの蔓がのびたり
お城へゆく路蓮の花ま白なり
松の葉散れり泉水の青き空
障子いつぱいに山の陽さしたり
ただにうれしくてぞ子馬とぶらし
寝ころべる犬に椿の花が落つ