昨夜、又吉直樹(芸人)と田中象雨(書道家)のコラボレーションによる『新・四字熟語』(2012)を読み終えました。
この本は元々『鈴虫炒飯』として刊行したものを、文庫化にあたり『新・四字熟語』と改題したものです。この本について、文庫本ブックカバー裏表紙の解説を引用します。
この本は元々『鈴虫炒飯』として刊行したものを、文庫化にあたり『新・四字熟語』と改題したものです。この本について、文庫本ブックカバー裏表紙の解説を引用します。
鈴虫炒飯とは、噛むと鈴虫の鳴き声のように美しい音が響く炒飯。構内抱擁とは真夜中の駅構内で抱き合っているカップル、転じて「なぜここで?」という意。肉村八分とは鍋や焼肉で、他の皆が示し合わしたように肉を食べさせてくれないこと。・・・ピース又吉が考え気鋭書家が表現する新・四字熟語120。
以下、一読して気に入った「新・四字熟語」を引用します。
◆夕焼左折(ゆうやけさせつ)
タクシーの運転手さんが「夕焼けが綺麗ですね」と先に言ってくれた。相槌を打ったら「こっちから行きましょう」と空が広い道を走ってくれた。夕焼左折。黄昏右折。
◆白服伽哩(しろふくかりー)
白い衣服にカレーが飛散する様子から、美しいものに付く汚れは目立つという意。落ちこぼれが失敗しても特に世間は騒がないが、優秀な者の汚点には滅法反応が早い。実は良い人と呼ばれる方が好感度が高く、普段愛想の良い人物が不満を洩らすと総すかんを喰らう。自分も含め、身の回りのものはある程度汚しておいた方が得策だ。
◆構内抱擁(こうないほうよう)
真夜中の駅構内のホームの隅やコインロッカーの前で抱き合っているカップル。転じて、「なぜここで?」と言う意。
【用例】怒る父に、覚えたてのマジックを披露し機嫌を取ろうとしたが構内抱擁だったのか、しばかれました。
◆溜息影濃(ためいきえいのう)
吐いた溜め息の影が濃くなっていく。思い悩み活路が見出せない状態の人。
◆鼻毛鳳凰(はなげほうおう)
鼻毛が鳳凰のように優雅にそよいでいる様子。ただの鼻毛では情けないだけで何の役にも立たないが、誇り高き鳳凰のような鼻毛ならば馬鹿にはできない。世間的に欠点やコンプレックスと捉えられる事象も本人の意識一つで魅力的な財産になり得る。
◆放屁和解(ほうひわかい)
凄まじい喧嘩をしていたのに、どちらか、或いは第三者が屁をこいてしまい、どちらともなく笑ってしまい、気持ちが収まること。屁に救われること。しょうもないことが、時には大きな何かを解決することもある。
【用例】殴り飛ばしてやろうと思ったが、そいつのTシャツに「ガンジー」と書いてあったので、笑ってしまった。放屁和解というやつだ。
◆幹事横領(かんじおうりょう)
信じていた人に裏切られること。
◆欠伸百年(あくびひゃくねん)
欠伸の貯金が百年分たまるほど、退屈すぎたり、眠すぎたりすること。
【用例】先輩の学生時代はモテモテだったという話は欠伸百年。
◆素人八段(しろうとはちだん)
この上なく素人であり、知ったような口もきかず、端然と役立たずであること。
◆返事天才(へんじてんさい)
返事は快活で天晴れだが、他にはなにもできない奴。
◆先頭孤立(せんとうこりつ)
誰もやらぬなら、俺がやるしかないと勇気を出して矢面に立つと、援護射撃が無いまま孤立して倒れる。倒れながら、遠くの方で同じことをしている人を見つけた。その人は仲間に囲まれていて羨ましいなと思いながら、気が付いたら眼を開けたまま、冷たい地面に頬をつけている。
【対義語】全員家族
◆肌着観音(はだぎかんのん)
肌着の時は誰もが、無防備と呼べるほどリラックス状態にあり、心にもゆとりがあって観音のようだ。着衣だけではなく、精神も理論などで武装せずに自然体で接してくれる人のことを指す。たまに無防備なだけの馬鹿もいる。
◆前衛大衆(ぜんえいたいしゅう)
前衛的なことをやっていれば、自分の保身や生活の安定を求めずに攻め続ける求道者と見なされ格好がつくという、一定数の受け皿が用意された大衆的な考え方。
◆自家楽園(じからくえん)
ひきこもっているが、そんな日々を本人は楽しんでいること。
◆他暴自棄(たぼうじき)
他人の勝手な行いが、自分に影響を及ぼし絶望させられること。
◆心器百畳(しんきひゃくじょう)
心の器の大きさが百畳くらいある様。
【対義語】心器便所
【用例】後ろから殴っても怒らないなんて、本当に心器百畳だ。
◆突撃哲学(とつげきてつがく)
(前略)哲学ってなんだろう? 哲学に興味を持つ二人の若者が演じた何の生産性もない無駄な時間。哲学は自分の経験に寄り添わせるくらいが丁度良いのではないか。哲学に突撃するとろくなことがない。そして、自分を深く掘り下げて観察すると必ず自分が変な人間に思えてくるから危険だ。考えすぎは良くないのである。哲学や思想に突撃してはいけないのである。
◆間隔静観(かんかくせいかん)
(前略)何かと何かの距離を、静かに見守ること。
◆餃子礼讃(ギョーザらいさん)
たまに、「餃子が一番美味しい」と言う人がいるが、一番ってことはない。愛嬌があって親しみやすいものを過大評価し過ぎること。
【用例】あ~、温泉なんかより我が家の風呂が一番。というのは餃子礼讃。
◆蝉声忘却(せみごえぼうきゃく)
夏の間、あんなにもうるさかった蝉の鳴き声も季節が変われば忘れてしまう。
【用例】失恋は辛かろう、だが蝉声忘却。月日が流れれば、新しい恋をしているさ。
◆居候昼寝(いそうろうひるね)
居候なのに昼寝をしている。居候なのに勝手に雑誌の袋綴じを開ける。居候なのに鍵の隠し場所を変える。自分の立場をわきまえていない行動。
【対義語】王様掃除
◆土産自食(みやげじしょく)
誰かがお土産で買ってきた菓子を、皆で食べたら美味しかった。その土地に自分が行ったので、同じものを買い、家で一人で食ったらあまり美味しくなかった。むしろ哀しい味がした。皆で食べた時が思い返され、余計に寂しくなるのだ。皆で分かち合うべき事柄を一人で消化するのは止めた方がいい。
◆大人中退(おとなちゅうたい)
大人であることを途中で退くこと。大人としての常識を知った上で、それを捨てて子供に返ること。真面目な大人が一時的に、はめを外す場合に使うこともある。
【用例】課長を辞める覚悟はできている。大人中退、ドラムは私に任せてくれ。
◆鈴虫炒飯(すずむしチャーハン)
噛むと鈴虫の鳴き声のように美しい音が響く炒飯。急いで食べると「りいんりいん」という音が連鎖して、美しい旋律を奏でてしまうので、全ての人が仕事を放り出して聞き惚れてしまう。だから、鈴虫炒飯を食べるのは午後からの予定が無い時が良い。鈴虫炒飯は精神的に余裕がある人の質を求めた食事の意。転じて、「何よりも内容を求める状態」のこと。
◆心中真珠(しんちゅうしんじゅ)
どのような深刻な状況にある人々にも必ず、心の奥底には光るなにかがあるという意。
【対義語】全身汚物
◆食後狂乱(しょくごきょうらん)
狂乱する原因や理由は最初からあったのだが、一応腹も減っているし、ご飯だけは食べて、食べ終わってから予定調和に狂乱すること。狂うのにもムードが必要らしい。
◆円卓一人(えんたくひとり)
大人数でこそ機能を存分に発揮する装置も、一人では何の役にも立たない。それどころか、円形で角が無いため、コップや箸などが落ちやすくなる。折角だからといって、おかずを回し、自分と一旦距離をとってから、再び引き戻したりしても虚無なだけで楽しくは無い。
【用例】一人でピクニックなんて円卓一人やん。
◆夕焼左折(ゆうやけさせつ)
タクシーの運転手さんが「夕焼けが綺麗ですね」と先に言ってくれた。相槌を打ったら「こっちから行きましょう」と空が広い道を走ってくれた。夕焼左折。黄昏右折。
◆白服伽哩(しろふくかりー)
白い衣服にカレーが飛散する様子から、美しいものに付く汚れは目立つという意。落ちこぼれが失敗しても特に世間は騒がないが、優秀な者の汚点には滅法反応が早い。実は良い人と呼ばれる方が好感度が高く、普段愛想の良い人物が不満を洩らすと総すかんを喰らう。自分も含め、身の回りのものはある程度汚しておいた方が得策だ。
◆構内抱擁(こうないほうよう)
真夜中の駅構内のホームの隅やコインロッカーの前で抱き合っているカップル。転じて、「なぜここで?」と言う意。
【用例】怒る父に、覚えたてのマジックを披露し機嫌を取ろうとしたが構内抱擁だったのか、しばかれました。
◆溜息影濃(ためいきえいのう)
吐いた溜め息の影が濃くなっていく。思い悩み活路が見出せない状態の人。
◆鼻毛鳳凰(はなげほうおう)
鼻毛が鳳凰のように優雅にそよいでいる様子。ただの鼻毛では情けないだけで何の役にも立たないが、誇り高き鳳凰のような鼻毛ならば馬鹿にはできない。世間的に欠点やコンプレックスと捉えられる事象も本人の意識一つで魅力的な財産になり得る。
◆放屁和解(ほうひわかい)
凄まじい喧嘩をしていたのに、どちらか、或いは第三者が屁をこいてしまい、どちらともなく笑ってしまい、気持ちが収まること。屁に救われること。しょうもないことが、時には大きな何かを解決することもある。
【用例】殴り飛ばしてやろうと思ったが、そいつのTシャツに「ガンジー」と書いてあったので、笑ってしまった。放屁和解というやつだ。
◆幹事横領(かんじおうりょう)
信じていた人に裏切られること。
◆欠伸百年(あくびひゃくねん)
欠伸の貯金が百年分たまるほど、退屈すぎたり、眠すぎたりすること。
【用例】先輩の学生時代はモテモテだったという話は欠伸百年。
◆素人八段(しろうとはちだん)
この上なく素人であり、知ったような口もきかず、端然と役立たずであること。
◆返事天才(へんじてんさい)
返事は快活で天晴れだが、他にはなにもできない奴。
◆先頭孤立(せんとうこりつ)
誰もやらぬなら、俺がやるしかないと勇気を出して矢面に立つと、援護射撃が無いまま孤立して倒れる。倒れながら、遠くの方で同じことをしている人を見つけた。その人は仲間に囲まれていて羨ましいなと思いながら、気が付いたら眼を開けたまま、冷たい地面に頬をつけている。
【対義語】全員家族
◆肌着観音(はだぎかんのん)
肌着の時は誰もが、無防備と呼べるほどリラックス状態にあり、心にもゆとりがあって観音のようだ。着衣だけではなく、精神も理論などで武装せずに自然体で接してくれる人のことを指す。たまに無防備なだけの馬鹿もいる。
◆前衛大衆(ぜんえいたいしゅう)
前衛的なことをやっていれば、自分の保身や生活の安定を求めずに攻め続ける求道者と見なされ格好がつくという、一定数の受け皿が用意された大衆的な考え方。
◆自家楽園(じからくえん)
ひきこもっているが、そんな日々を本人は楽しんでいること。
◆他暴自棄(たぼうじき)
他人の勝手な行いが、自分に影響を及ぼし絶望させられること。
◆心器百畳(しんきひゃくじょう)
心の器の大きさが百畳くらいある様。
【対義語】心器便所
【用例】後ろから殴っても怒らないなんて、本当に心器百畳だ。
◆突撃哲学(とつげきてつがく)
(前略)哲学ってなんだろう? 哲学に興味を持つ二人の若者が演じた何の生産性もない無駄な時間。哲学は自分の経験に寄り添わせるくらいが丁度良いのではないか。哲学に突撃するとろくなことがない。そして、自分を深く掘り下げて観察すると必ず自分が変な人間に思えてくるから危険だ。考えすぎは良くないのである。哲学や思想に突撃してはいけないのである。
◆間隔静観(かんかくせいかん)
(前略)何かと何かの距離を、静かに見守ること。
◆餃子礼讃(ギョーザらいさん)
たまに、「餃子が一番美味しい」と言う人がいるが、一番ってことはない。愛嬌があって親しみやすいものを過大評価し過ぎること。
【用例】あ~、温泉なんかより我が家の風呂が一番。というのは餃子礼讃。
◆蝉声忘却(せみごえぼうきゃく)
夏の間、あんなにもうるさかった蝉の鳴き声も季節が変われば忘れてしまう。
【用例】失恋は辛かろう、だが蝉声忘却。月日が流れれば、新しい恋をしているさ。
◆居候昼寝(いそうろうひるね)
居候なのに昼寝をしている。居候なのに勝手に雑誌の袋綴じを開ける。居候なのに鍵の隠し場所を変える。自分の立場をわきまえていない行動。
【対義語】王様掃除
◆土産自食(みやげじしょく)
誰かがお土産で買ってきた菓子を、皆で食べたら美味しかった。その土地に自分が行ったので、同じものを買い、家で一人で食ったらあまり美味しくなかった。むしろ哀しい味がした。皆で食べた時が思い返され、余計に寂しくなるのだ。皆で分かち合うべき事柄を一人で消化するのは止めた方がいい。
◆大人中退(おとなちゅうたい)
大人であることを途中で退くこと。大人としての常識を知った上で、それを捨てて子供に返ること。真面目な大人が一時的に、はめを外す場合に使うこともある。
【用例】課長を辞める覚悟はできている。大人中退、ドラムは私に任せてくれ。
◆鈴虫炒飯(すずむしチャーハン)
噛むと鈴虫の鳴き声のように美しい音が響く炒飯。急いで食べると「りいんりいん」という音が連鎖して、美しい旋律を奏でてしまうので、全ての人が仕事を放り出して聞き惚れてしまう。だから、鈴虫炒飯を食べるのは午後からの予定が無い時が良い。鈴虫炒飯は精神的に余裕がある人の質を求めた食事の意。転じて、「何よりも内容を求める状態」のこと。
◆心中真珠(しんちゅうしんじゅ)
どのような深刻な状況にある人々にも必ず、心の奥底には光るなにかがあるという意。
【対義語】全身汚物
◆食後狂乱(しょくごきょうらん)
狂乱する原因や理由は最初からあったのだが、一応腹も減っているし、ご飯だけは食べて、食べ終わってから予定調和に狂乱すること。狂うのにもムードが必要らしい。
◆円卓一人(えんたくひとり)
大人数でこそ機能を存分に発揮する装置も、一人では何の役にも立たない。それどころか、円形で角が無いため、コップや箸などが落ちやすくなる。折角だからといって、おかずを回し、自分と一旦距離をとってから、再び引き戻したりしても虚無なだけで楽しくは無い。
【用例】一人でピクニックなんて円卓一人やん。