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村上春樹「我らの時代のフォークロア ――高度資本主義前史」を読みました。

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昨日、村上春樹の短編小説「我らの時代のフォークロア ――高度資本主義前史」(89)を読みました。彼の紀行文集『ラオスにいったい何があるというんですか?』(15)の「白い道と赤いワイン トスカナ」にこの作品のことが書かれていたからです。

◆「我らの時代のフォークロア ――高度資本主義前史」は、短編集『TVピープル』(90)に収録されており、この短編集には他に「TVピープル」「飛行機 ――あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか」「加納クレタ」「ゾンビ」「眠り」の5編が収録されています。

◆僕(語り手)はローマに住んでおり、イタリア旅行中に中部イタリアのルッカで高校時代の同級生と偶然出会います。二人はその夜レストランで一緒に食事をし、それぞれの近況などを語り合います。やがて、同級生は高校時代の恋人の話を始めます。
 同級生とその恋人の関係性、そして同級生の人物像は村上春樹の多くの作品に描かれたカップルや人物を想起させます。たとえば、『ノルウェイの森』(87)のキズキと直子、『ダンス・ダンス・ダンス』(88)の五反田君。「我らの時代のフォークロア ――高度資本主義前史」は、この2作品とほぼ同時期に書かれています。

◆高校の同級生がルッカで偶然出会うという設定はいいと思います。しかし、同級生の恋人の処女性に対する考え方は理解できないし、同級生が深い哀しみとともに「すべてが終わったあとで、王様も家来もみんな腹を抱えておお笑い」と語る場面は滑稽に思えます。僕(語り手)は同級生の話を聞いておお笑いなんかできなかったと言いますが。

◆短編集『TVピープル』を初めて読んだ時の評価は、あくまでも僕の個人的な考えですが、村上春樹の12の短編小説集うち最下位でした。でも、いいきっかけができたので、他の5編も読んでみようと思います。

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フィレンツェから西に行けば、ルッカがあります。

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