今日、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読み終えました。
初めてこの作品を読んだ時は、タイトルのユニークさに比べ、昔ながらの登場人物やストーリーにがっかりしました。でも、それは僕の読みが浅く、作家の意図をよく理解していないからだと思っていました。ですから、何年後かに再読すればもっと内容を理解し、この作品の良さがわかるだろうとも思っていました。
今回、文庫化(2015.12.10)を機に2年8か月ぶりに読んでみましたが、感想は前回とほぼ同じでした。
初めてこの作品を読んだ時は、タイトルのユニークさに比べ、昔ながらの登場人物やストーリーにがっかりしました。でも、それは僕の読みが浅く、作家の意図をよく理解していないからだと思っていました。ですから、何年後かに再読すればもっと内容を理解し、この作品の良さがわかるだろうとも思っていました。
今回、文庫化(2015.12.10)を機に2年8か月ぶりに読んでみましたが、感想は前回とほぼ同じでした。
◆構成
主人公・多崎つくるの過去と現在が交互に描かれており、知らず知らずのうちに先へ先へと読み進んでいました。作品の構成としては、読者を惹きつけるいい手法だと思います。
・回想~4人の親友(赤松慶=アカ、青海悦夫=アオ、白根柚木=シロ、黒埜恵理=クロ)
大学の友人(灰田文紹)
・現在~新しい恋人(木元沙羅)
・現在~4人を訪ねる「巡礼の旅」
主人公・多崎つくるの過去と現在が交互に描かれており、知らず知らずのうちに先へ先へと読み進んでいました。作品の構成としては、読者を惹きつけるいい手法だと思います。
・回想~4人の親友(赤松慶=アカ、青海悦夫=アオ、白根柚木=シロ、黒埜恵理=クロ)
大学の友人(灰田文紹)
・現在~新しい恋人(木元沙羅)
・現在~4人を訪ねる「巡礼の旅」
◆ストーリー
なぜ多崎つくるは他の4人から絶縁されたのか、という謎解きのおもしろさがあります。しかし、つくるは死を考えるほど苦しんだのなら、その前に絶縁された理由を4人に聞くべきではなかったのか? そんな疑問が湧いてきます。木元沙羅も同じ疑問を持ってつくるに尋ねますが、つくるの答えはあまり説得力のあるものではありませんでした。
つくるは沙羅に促され、4人を訪ねる「巡礼の旅」に出ます。東京から名古屋、そしてフィンランドへ。こうした場面転換は読者を飽きさせません。つくるの「巡礼の旅」をフランツ・リストのピアノ独奏曲集“巡礼の年”と重ね合わせて箔を付けようとするのは著者の常套手段です。
なぜ多崎つくるは他の4人から絶縁されたのか、という謎解きのおもしろさがあります。しかし、つくるは死を考えるほど苦しんだのなら、その前に絶縁された理由を4人に聞くべきではなかったのか? そんな疑問が湧いてきます。木元沙羅も同じ疑問を持ってつくるに尋ねますが、つくるの答えはあまり説得力のあるものではありませんでした。
つくるは沙羅に促され、4人を訪ねる「巡礼の旅」に出ます。東京から名古屋、そしてフィンランドへ。こうした場面転換は読者を飽きさせません。つくるの「巡礼の旅」をフランツ・リストのピアノ独奏曲集“巡礼の年”と重ね合わせて箔を付けようとするのは著者の常套手段です。
◆人物設定
つくるの友人たちは名前に「アカ」「アオ」「シロ」「クロ」「グレー」といった色彩を持っていますが、つくるの名前には色彩がありません。しかし、つくるはそのことで自らを「色彩を持たない」と言っているのではなく、自らの個性の無さや特に優れた能力が無いことを思って「色彩を持たない」を言っているのです。
「シロ」こと白根柚木の死は謎です。結局、「悪霊」によって損なわれたというのが結論です。彼女は『ノルウェイの森』の直子を思い起こさせます。
大学の友人・灰田文紹はいつの間にかこの物語の舞台から消えてしまいます。これも著者の常套手段です。
つくるの友人たちは名前に「アカ」「アオ」「シロ」「クロ」「グレー」といった色彩を持っていますが、つくるの名前には色彩がありません。しかし、つくるはそのことで自らを「色彩を持たない」と言っているのではなく、自らの個性の無さや特に優れた能力が無いことを思って「色彩を持たない」を言っているのです。
「シロ」こと白根柚木の死は謎です。結局、「悪霊」によって損なわれたというのが結論です。彼女は『ノルウェイの森』の直子を思い起こさせます。
大学の友人・灰田文紹はいつの間にかこの物語の舞台から消えてしまいます。これも著者の常套手段です。
◆以下、文庫本のブックカバー裏面の解説です。
多崎つくるは鉄道の駅をつくっている。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。理由も告げられずに。死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時何が起きたのか探り始めるのだった。