今日、ポール・オースターの『オラクル・ナイト』(2010)を読み始めました。
この作品の主人公は重病を患い、医者も匙を投げるほどでしたが、奇跡的に生還しました。冒頭の文章にはそんな彼のリハビリの様子が描かれています。これは作品の本題とは違いますが、冒頭の文章は病気療養中の僕を勇気づけてくれました。
この作品の主人公は重病を患い、医者も匙を投げるほどでしたが、奇跡的に生還しました。冒頭の文章にはそんな彼のリハビリの様子が描かれています。これは作品の本題とは違いますが、冒頭の文章は病気療養中の僕を勇気づけてくれました。
まずは短い外出からはじめた。アパートメントから四つ角を一つ、二つ行って帰ってくる。私はまだ三十四歳だったが、病気のせいですべての面で老人になり果てていた。体の麻痺した、足を引きずって歩く、足下を確かめないことには片足を前に出すこともおぼつかない老いぼれ、当時の私にはやっとのゆっくりしたペースでも、歩くことは頭のなかに奇妙なふらふら感を生み出した。いろんな信号がごっちゃに絡みあい、精神の回路が混線して乱闘状態が生じていた。世界が目の前で跳ね、泳ぎ、波打った鏡に映る像のようにうねった。‥‥‥。
‥‥‥。それでも私はやめなかった。毎朝自分に鞭打ってアパートメントの階段を降り、表に出た。脳内のぐじゃぐじゃが収まってきて、体力が徐々に戻ってくると、散歩の範囲を同じ近所でももっと遠くの隅までのばせるようになった。十分が二十分になり、一時間が二時間に、二時間が三時間になった。(P5-7)
‥‥‥。それでも私はやめなかった。毎朝自分に鞭打ってアパートメントの階段を降り、表に出た。脳内のぐじゃぐじゃが収まってきて、体力が徐々に戻ってくると、散歩の範囲を同じ近所でももっと遠くの隅までのばせるようになった。十分が二十分になり、一時間が二時間に、二時間が三時間になった。(P5-7)