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『尾崎放哉句集』を読みました。

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今日、『尾崎放哉句集』(春陽堂書店、02)を読み終えました。尾崎放哉の句集はちくま文庫版と岩波文庫版を持っていますが、新たな気持ちで読もうと思い、今回春陽堂書店版を購入しました。
以下、一読して気になった句を引用します。


  あすは雨らしい青葉の中の堂を閉める
  なぎさふりかへる我が足跡もなく
  わかれを云ひて幌をろす白いゆびさき
  茄子もいできてぎしぎし洗ふ
  船乗りと山の温泉に来て雨をきいてる

  あらしの闇を見つめるわが眼が灯もる
  たばこが消えて居る淋しさをなげすてる
  蚊帳の釣手を高くして僧と二人寝る
  蟻を殺す殺すつぎから出てくる
  友の夏帽が新らしい海に行かうか

  人をそしる心をすて豆の皮むく
  傘さしかけて心寄りそへる
  障子しめきつて淋しさをみたす
  ぶつりと鼻緒が切れた闇の中なる
  マツチの棒で耳かいて暮れてる

  何か求むる心海へ放つ
  心をまとめる鉛筆とがらす
  仏にひまをもらつて洗濯してゐる
  わがからだ焚火にうらおもてあぶる
  こんなよい月を一人で見て寝る

  寂しいぞ一人五本のゆびを開いて見る
  わが顔ぶらさげてあやまりにゆく
  庭を掃いて行く庭の隅なるけいとう
  かへす傘又かりてかへる夕べの同じ道である
  笑へば泣くやうに見える顔よりほかなかつた

  両手をいれものにして木の実をもらふ
  ひげがのびた顔を火鉢の上にのつける
  にくい顔思ひ出し石ころをける
  人を待つ小さな座敷で海が見える
  考へ事をしてゐる田にしが歩いて居る

  するどい風の中で別れようとする
  ころりと横になる今日が終わつて居る
  一本のからかさを貸してしまつた
  海がまつ青な昼の床屋にはいる
  昼寝の足のうらが見えてゐる訪(おとな)ふ

  眼の前魚がとんで見せる島の夕陽に来て居る
  山の和尚の酒の友とし丸い月ある
  海が少し見える小さい窓一つもつ
  わが庵とし鶏頭がたくさん赤うなつて居る
  松かさも火にして豆が煮えた

  雨の椿に下駄辷(すべ)らしてたづねて来た
  あけがたとろりとした時の夢であつたよ
  夕立からりと晴れて大きな鯖をもらつた
  お遍路木槿の花をほめる杖つく
  都のはやりうたうたつて島のあめ売り

  障子あけて置く海も暮れきる
  あらしがすつかり青空にしてしまつた
  月夜風ある一人咳して
  火の気のない火鉢を寝床から見て居る
  来る船来る船に一つの島

  夜の木の肌に手を添へて待つ
  障子の穴から覗いて見ても留守である
  入れものが無い両手で受ける
  咳をしても一人
  菊枯れ尽したる海少し見ゆ

  恋心四十にして穂芒
  なんと丸い月が出たよ窓
  針の穴の青空に糸を通す
  今日も夕陽となり座つてゐる
  とつぷり暮れて足を洗つて居る

  あすは元日が来る仏とわたくし
  なにかこはれた音もしてたそがれ
  やせたからだを窓に置き船の汽笛
  すつかり病人になつて柳の糸が吹かれゐる
   


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