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村上春樹『海辺のカフカ』を読みました。(再)

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 今日、村上春樹の長編第10作『海辺のカフカ』(2002)を読み終えました。(再)
 この作品について、ブックカバー裏表紙の解説を引用します。
上巻
 「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。

下巻
 四国の図書館に着いたカフカ少年が出会ったのは、30年前のヒットソング、夏の海辺の少年の絵、15歳の美しい少女――。一方、猫と交流ができる老人ナカタさんも、ホシノ青年に助けられながら旅を続ける。〈入り口の石〉を見つけだし、世界と世界が結びあわされるはずの場所を探すために。謎のキーワードが二人を導く闇の世界に出口はあるのか? 海外でも高い評価を受ける傑作長篇小説。

【感想等】
◆「僕」とナカタさんの物語が交互に描かれる、いわゆる「パラレル進行」の形式がとられています。この手法は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985)以来で、のちに『1Q84』(2009/10)が続きます。
 2つの物語はそれぞれ別の場所、別の時代から始まりますが、やがてそれらは四国・高松市で一つに収束していきます。

◆登場人物がユニーク過ぎるし、ストーリー展開も謎と不思議だらけですが、最初に読んだ時ほどの違和感は感じなくなりました。
 しかし、主人公のカフカ少年(偽名)は、15歳なのに精神的に成熟し過ぎじゃないかと思う。18歳くらいなら納得できるけど。たぶん、僕が15歳だった頃って相当幼かったからそう思うのかもしれません。

◆もう一人の主人公ナカタさんの旅の道連れ、星野青年の見かけは、これまの村上作品には無かったユニークさ、というよりダサさです。
「中日ドラゴンズの帽子、レイバンの緑のサングラス、レーヨンのアロハシャツ、ポニーテール、ピアス」
 本人は冬でもアロハシャツというこだわりを持っているので、ダサいと切り捨てるのは失礼でしょうか。
 彼のナカタさんへの献身、そして内省と成長には共感を覚えます。彼が何度も聴いたベートーヴェンの『大公トリオ』(ピアノ三重奏曲第7番)を僕も聴こうと思いました。

◆この作品にもたくさんの音楽が溢れています。以下に「作品中に登場する音楽/ミュージシャン一覧」としてまとめてみました。
 この作品を読んでいる期間、一覧中にある、プリンスの『1999』やクリームの『Wheels of Fire』を聴きました。



◆主な登場人物(登場順)
〈僕の物語〉
・僕(田村カフカ)
・カラスと呼ばれる少年
・さくら
・大島
・佐伯
・サダ(大島の兄)
〈ナカタさんの物語〉
・ナカタ(ナカタサトル)
・ジョニー・ウォーカー
・星野
・カーネル・サンダーズ

◆気になった文章
・しばらく進んだところに、丸いかたちに開けた場所がある。背の高い樹木にかこまれて、それはまるで大きな井戸の底のようだ。開かれた枝のあいだから太陽の光がまっすぐ降って、スポットライトとなって足もとを明るく照らしだしている。それは僕にはなにかとくべつな場所のように感じられる。僕はその光の中に腰をおろし、太陽のささやかな温かみを受けとる。(上巻 P288)

・大島さんは僕の目をのぞきこむ。「いいかい、田村カフカくん、君が今感じていることは、多くのギリシャ悲劇のモチーフになっていることでもあるんだ。人が運命を選ぶのではなく、運命が人を選ぶ。それがギリシャ悲劇の根本にある世界観だ。そしてその悲劇性は――アリストテレスが定義していることだけれど――皮肉なことに当事者の欠点によってというよりは、むしろ美点を梃子にしてもたらされる。僕の言っていることはわかりかい? 人はその欠点によってではなく、その美点によってより大きな悲劇の中にひきずりこまれていく。ソフォクレスの『オイディプス王』が顕著な例だ。オイディプス王の場合、怠惰とか愚鈍さによってではなく、その勇敢さと正直さによってまさに彼の悲劇はもたらされる。そこに不可避的にアイロニーが生まれる」(上巻 P421)

・『海辺のカフカ』
あなたが世界の縁にいるとき
私は死んだ火口にいて
ドアのかげに立っているのは
文字をなくした言葉。

眠るとかげを月が照らし
空から小さな魚が降り
窓の外には心をかためた
兵士たちがいる。

(リフレイン)
海辺の椅子にカフカは座り
世界を動かす振り子を想う。
心の輪が閉じるとき
どこにも行けないスフィンクスの
影がナイフとなって
あなたの夢を貫く。

溺れた少女の指は
入り口の石を探し求める。
蒼い衣の裾をあげて
海辺のカフカを見る。
(上巻 P480-481)

・カーネル・サンダーズは重々しく何度かうなずいた。そしてあご髭を意味ありげに撫でた。「そうだ。まず入れ入れが大事なんだ。儀式みたいなもんだ。まずは入れ入れ。石のことはそのあとで話そう。ホシノちゃん、この子はきっと気に入ると思うね。うちの掛け値なしのナンバーワンだ。おっぱいむちむち、肌はつるつる、腰はくねくね、あそこはぐしょぐしょ、ばりんばりんのセックス・マシンだ。車にたとえるならば、まさにベッドの四輪駆動、踏み込めば愛欲のターボ、指が包むは怒濤のシフトノブ、さあ、コーナーだ、とろけるギアチェンジ、よしきた追い越し車線まっしぐら、行くぞ、行くぞ、ホシノちゃん見事に大昇天だ」(下巻 P94)
 ~村上春樹がこんな表現をするなんて、意外だけどおもしろい。

・「ヒツジ年の執事は手術の必需品」(P240)
 ~星野がつくった早口ことば

◆作品中に登場する音楽/ミュージシャン一覧
🎵 デューク・エリントン、ビートルズ、レッド・ツェッペリン
🎵 プリンス
🎵 レイディオヘッド
🎵 プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』
🎵 シューベルトのピアノ・ソナタ(ニ長調ソナタ)

🎵 クリーム「クロスロード」(『クリームの素晴らしき世界 Wheels of Fire』収録)、デューク・エリントン
🎵 プリンス「リトル・レッド・コーヴェット」(『1999』収録)
🎵 ディズニー映画『白雪姫』の中で7人のこびとたちが歌う「ハイホー!」
🎵 プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』から「我が名はミミ」
🎵 1960年代に流行った音楽のLP――ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ビーチボーイズ、サイモンとガーファンクル、スティーヴィー・ワンダー

🎵 ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
🎵 「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」
🎵 ボブ・ディラン『ブロンド・オン・ブロンド』、ビートルズ『ホワイト・アルバム』、オーティス・レディング『ドック・オブ・ザ・ベイ』、スタン・ゲッツ『ゲッツ/ジルベルト』
🎵 プッチーニ、ハイドン
🎵 プリンス「リトル・レッド・コーヴェット」「せく・マザーファッカー」

🎵 ベートーヴェン『ピアノ三重奏曲第7番(大公トリオ)』
🎵 ハイドン『チェロ協奏曲第1番』
🎵 モーツァルト『セレナーデ第9番(ポストホルン・セレナーデ)』
🎵 ベートーヴェン『ピアノ三重奏曲第5番(幽霊トリオ)』
🎵 井上陽水「夢の中へ」

🎵 レイディオヘッド『キッドA』、プリンス『グレーティスト・ヒッツ』
🎵 ベルリオーズ、ワグナー、リスト、シューマン
🎵 「エーデルワイス」
🎵 FMラジオから流れる音楽

◆作品中に登場する車一覧
●クリーム色のBMW530
●緑色のマツダ・ロードスター
●グレーのフォルクスワーゲン・ゴルフ
●白いトヨタ・ターセル
●黒いトヨタ・スープラ

●白いマツダ・ファミリア
●スズキ・アルト
●四輪駆動のダットサン


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