今日、レイモンド・チャンドラーの『高い窓』(1942・村上春樹訳)を読み終えました。
この作品は探偵フィリップ・マーロウを主人公とする長編シリーズの第3作です。「訳者あとがき」に「これが僕にとっての五冊目のチャンドラー長篇小説の翻訳になる。チャンドラーは全部で七冊の長篇小説をのこしているから、あと二冊で『完訳』ということになる。せっかくだから、というか、ここまできたら全部やってしまいたい。おつきあいいただけえば嬉しい」とあるので、第4作“The Lady in the Lake”(1943)と第7作“Playback”(1958)のできるだけ早い翻訳を期待したい。
この作品は探偵フィリップ・マーロウを主人公とする長編シリーズの第3作です。「訳者あとがき」に「これが僕にとっての五冊目のチャンドラー長篇小説の翻訳になる。チャンドラーは全部で七冊の長篇小説をのこしているから、あと二冊で『完訳』ということになる。せっかくだから、というか、ここまできたら全部やってしまいたい。おつきあいいただけえば嬉しい」とあるので、第4作“The Lady in the Lake”(1943)と第7作“Playback”(1958)のできるだけ早い翻訳を期待したい。
【ストーリー】
私立探偵フィリップ・マーロウは、裕福な老女エリザベス・マードックから、出奔した義理の娘リンダを探してほしいと依頼された。老女は、亡き夫が遺した貴重な金貨をリンダが持ち逃げしたと固く信じていたが、エリザベスの息子レスリー、秘書マールの振る舞いにもどこか裏がありそうな気配だ。マーロウは、リンダの女友だちや金貨の所在を尋ねてきた古銭商に当たるところから調査を始める。が、彼の行く手には脅迫とうそ、そして死体が待ち受けていた。(ブックカバーより)
私立探偵フィリップ・マーロウは、裕福な老女エリザベス・マードックから、出奔した義理の娘リンダを探してほしいと依頼された。老女は、亡き夫が遺した貴重な金貨をリンダが持ち逃げしたと固く信じていたが、エリザベスの息子レスリー、秘書マールの振る舞いにもどこか裏がありそうな気配だ。マーロウは、リンダの女友だちや金貨の所在を尋ねてきた古銭商に当たるところから調査を始める。が、彼の行く手には脅迫とうそ、そして死体が待ち受けていた。(ブックカバーより)
【感想】
◆正直に言ってイマイチな内容でしたが、久々にフィリップ・マーロウに会えたし、嫌いにはならない作品だと思います。
多くの登場人物の中でこの人物こそ事件のキーパーソンだと思ったのに、全く無関係だったりします。これは僕の推理力不足ではなく、作者が無駄に思わせぶりな書き方をしているからだと思います。
最後のマーロウの謎解き(P313~322)で事件の全体像はわかりますが、それまで全く触れられなかったことまで含めての話なので、「おいおい」って感じです。
◆登場人物の描写がとても細かいのは、探偵フィリップ・マーロウの目を通して描いているからでしょう。以下、リンダの女友だちロイスについての描写を引用します。
◆正直に言ってイマイチな内容でしたが、久々にフィリップ・マーロウに会えたし、嫌いにはならない作品だと思います。
多くの登場人物の中でこの人物こそ事件のキーパーソンだと思ったのに、全く無関係だったりします。これは僕の推理力不足ではなく、作者が無駄に思わせぶりな書き方をしているからだと思います。
最後のマーロウの謎解き(P313~322)で事件の全体像はわかりますが、それまで全く触れられなかったことまで含めての話なので、「おいおい」って感じです。
◆登場人物の描写がとても細かいのは、探偵フィリップ・マーロウの目を通して描いているからでしょう。以下、リンダの女友だちロイスについての描写を引用します。
いかにもショーガールっぽいブロンドの髪の、脚の長い物憂いタイプの女が、椅子のひとつにすわって寛いでいた。クッションのついたフットレストに足を載せ、肘のところに曇った丈の高いグラスを置いていた。その近くには銀色のアイス・バケットと、スコッチの瓶があった。我々が芝生を横切って近づいていくと、女は気怠そうにこちらに目を向けた。十メートル手前から見ると、とびっきりの一級品に見えた。三メートル手前から見ると、彼女は十メートル手前から眺めるべくこしらえられていることわかった。口はいささか大きすぎたし、目はあまりにも青すぎた。化粧は濃すぎたし、眉の細いアーチのカーブや広がり方はほとんど現実離れしていた。まつげの上のマスカラは分厚すぎて、鉄製の柵のミニチュアみたいに見えた。
彼女は白いズック製のスラックスをはき、爪を深紅に塗った素足の上に、爪先の開いた青と白のサンダルを履いていた。白いシルクのブラウスに、緑の石のネックレスをかけていたが、それは四角くカットされたエメラルドではなさそうだった。髪はナイトクラブのロビー顔負けに人工的だった。
彼女の隣の椅子の上には、ガーデン用の麦わら帽子が置いてあった。つばはスペアタイヤくらいの大きさがあり、白いサテンの顎紐がついていた。つばの上には緑色のサングラスが置かれていたが、そのレンズはドーナッツ並みに大きかった。(P57~58)
彼女は白いズック製のスラックスをはき、爪を深紅に塗った素足の上に、爪先の開いた青と白のサンダルを履いていた。白いシルクのブラウスに、緑の石のネックレスをかけていたが、それは四角くカットされたエメラルドではなさそうだった。髪はナイトクラブのロビー顔負けに人工的だった。
彼女の隣の椅子の上には、ガーデン用の麦わら帽子が置いてあった。つばはスペアタイヤくらいの大きさがあり、白いサテンの顎紐がついていた。つばの上には緑色のサングラスが置かれていたが、そのレンズはドーナッツ並みに大きかった。(P57~58)