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最果タヒ『グッドモーニング』を読みました。

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昨夜、最果タヒの第一詩集『グッドモーニング』(07)を読みました。
彼女の詩を読んだのは初めてだったし、そのスタイルにも慣れていなかったので、「うーん?」という感じです。理解するにはまだまだ時間がかかりそうです。

◆収録作品
  yoake mae 1
    0/夏のくだもの/足の裏/会話切断ノート
  yoake mae 2
    故郷にて死にかける女子/苦行/友達/術語/空走距離
  yoake mae 3
    小牛と朝を/見エないという事/死ぬ間際にいう言葉がそれであればいいのに。/
    非妊/尋常
  yoake mae 4
    暴走車を追いすぎて、/博愛主義者/死なない
  yoake mae 5
    最弱
  good morning
    再会しましょう/きみを呪う/世界

以下、比較的読みやすそうな2編を引用します。
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  支配されていたものに戻ってきて
  いまこれを
  かき始めている
  視界と
  言葉をひきはがして

  裸でいました
  ひきずりながら、赤い土がひろがる砂漠にいました
  遠くで重いいきものの、足音が聞こえ、
  いつもなにかがつぶれる音が次いで聞こえていました

  わたしの口元には食べた
  いきものが三匹、復活をして、
  それがこれからのわたしを操作する
  指の隙間から海があふれ出て、
  それからすべてが溺れるだろう
  わたしの裸で、そこを泳ぐ

  言葉にすることが
  すべてを
  台無しにし
  わたしが
  ここからでていくことを不可能にする

  海は鏡だ
  その日、わたしはわたしの、溺れている体を見る
  わたしの指の隙間
  海があふれ出て、
  わたしはそこに吸い込まれながら、
  やっと
  言う
  これはなんだ

  支配されていたものに戻ってきて
  いまこれを
  かき始めている
  わたしの知っている言葉に
  あの場所を
  とらえることはできない
  気づかれないようにしている
  体が
  わたしになにかを
  見せることを拒否しているが
  わたしをまだ
  殺させはしない



  きみを呪う


  はねる泥
  それを
  のみこむ子供
  ゆるやかな坂道
  ねむそうな目
  蹴り上げて
  それから逃げた午後
  大人の背中でした、あんなことをしたあの人
  赤い斑点のあるスカーフを巻いて
  ひとりぼっちでした

  子供はわたしたちを中心にして放射線状に倒れた
  太陽はぐるぐるとまだ空をまわっていて
  わたしたちの影がぐるぐると駆け巡った
  子供たちは目をまわして
  それからおさまってもおきようとしなかった
  まわる太陽をじっと
  見つめていた

  赤い絵の具をおとしたところから
  ちいさな花が咲き始めて、
  それがみずたまりを埋め尽くしてしまう
  どこを走ってもくつのうらは濡れず
  ねむりたければすぐ
  倒れればよくなった
  光がときどき顔にさして
  それが
  わたしの顔をあいまいにした

  うみがやってくるまではよかった
  あなたが
  そうしてうみをつれてきて
  ここを沈めようとしている間
  わたしたちは
  たおれた子供たちをまたぎながら
  買い物に出かけていた
  子供たちは空を見ていた
  わたしたちはパンを買った

  風はざざんとふいて
  子供たちの少し上をとおりすぎるだろう
  わたしたちは背中でそれを受け止めて
  また編み物を続けるだろう
  毛糸はずっとたどれば山の奥の
  わきみずにつながっていた
  そばには赤色ときみどりのきのこがあって
  それを恐れて食べることを
  悪態だと教えられていた
  こわくはない
  きみが死ねばまたわたしがきみを産む
  時計がはりついてのみこまれた大きな木の下で
  すずしいなか
  わたしの名前をよんでいた子供が眠りに落ちた

  海がきたら沈む
  それが
  わかっていてきみはそこにいる?
  きみはなにもしらずに
  くだものを持ってくる
  家畜を持ってくる
  水を持ってくる
  玩具を持ってくる
  それでわたしたちの子供は起き上がって
  そちらにいくだろう喜ぶだろうわたしの目をきみは見ることなく喜ぶ目を見るだろう

  なあ
  きみ
  ゆっくりと津波がきて
  沈んでしまったら
  あの
  赤い花はてんてんのまま
  浮かび上がって地面からひきはがされる
  そうして
  わたしはそいつが枯れるのを
  こんな山奥で見ていなければならないのか



最果タヒ(さいはて たひ)
 日本の詩人、小説家。女性。1986年兵庫県神戸市生まれ。
 2005年、『現代詩手帖』2月号の新人作品欄に初投稿、入選した。その後も投稿を続け、2006年に優秀な投稿者に贈られる第44回現代詩手帖賞を受賞。2008年、京都大学在学中に『グッドモーニング』により当時女性では最年少の21歳で第13回中原中也賞を受賞した。
 2009年4月に初の短編小説「スパークした」を『群像』に発表。「スパークした」は2009年の『年刊日本SF傑作選』に収録される。2009年9月から『別冊少年マガジン』で連載詩「空が分裂する」を開始する。毎回漫画家やイラストレーターが詩にイラストを描いている。2011年2月から『現代詩手帖』で連載詩「夜ちゃんと空くんの星をたべる会」を開始する。2011年5月に初の中編小説「宇宙以前」を『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』4巻に発表。また、連載詩「空が分裂する」が『別冊少年マガジン』2011年6月号で最終回を迎える。2012年2月号から別冊少年マガジンで連載小説「魔法少女WEB」を開始。挿絵は紗和。
 森山森子という名義でブログでも活動。ブログ自体の名義も森山森子である。(Wikipediaより)

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