今日、太宰治の短編集『ろまん燈籠』(角川文庫)を読み終えました。
この短編集には太宰の中期(昭和13年~終戦)の作品が収録されていますが、「愛と美について」(新潮文庫では『新樹の言葉』収録)と「ろまん燈籠」(新潮文庫では『ろまん燈籠』収録)が一冊にまとまっているところがポイントです。「愛と美について」で試みた手法の完成型が「ろまん燈籠」だからです。
【収録作品】( )内は発表年
◆秋風記(昭和14年)
◆新樹の言葉(昭和14年)
この短編集には太宰の中期(昭和13年~終戦)の作品が収録されていますが、「愛と美について」(新潮文庫では『新樹の言葉』収録)と「ろまん燈籠」(新潮文庫では『ろまん燈籠』収録)が一冊にまとまっているところがポイントです。「愛と美について」で試みた手法の完成型が「ろまん燈籠」だからです。
【収録作品】( )内は発表年
◆秋風記(昭和14年)
◆新樹の言葉(昭和14年)
◆愛と美について(昭和14年)
5人の兄妹が末弟→長女→次男→次女→長兄の順に、ある老人の物語を語り継ぎます。冒頭で語り手の性格が語られ、それがそれぞれの語りに反映されています。
5人の兄妹が末弟→長女→次男→次女→長兄の順に、ある老人の物語を語り継ぎます。冒頭で語り手の性格が語られ、それがそれぞれの語りに反映されています。
◆ろまん燈籠(昭和15-16年)
5人の兄妹が、王子に愛された魔法使いの娘ラプンツェルの物語を順番に綴っていきます。末弟→長女→次男→次女→長兄の順に連作しますが、書き手の性格がそのまま文章に表れる様子がおもしろい。
5人の兄妹が、王子に愛された魔法使いの娘ラプンツェルの物語を順番に綴っていきます。末弟→長女→次男→次女→長兄の順に連作しますが、書き手の性格がそのまま文章に表れる様子がおもしろい。
◆女の決闘(昭和15年)
太宰は作品の書き出しにかなり気を遣っています。この作品中にそのことを意識している文章があったので引用します。
◆清貧譚(昭和16年)
太宰は作品の書き出しにかなり気を遣っています。この作品中にそのことを意識している文章があったので引用します。
いちども名前を聞いたことの無いような原作者が、ずいぶん多いですね。けれどもそんなことに頓着せず、めくらめっぽう読んで行っても、みんなそれぞれ面白いのです。みんな、書き出しが、うまい。書き出しの巧いというのは、その作者の「親切」であります。また、そんな親切な作者の作品ばかり選んで翻訳したのは、訳者、鴎外の親切であります。鴎外自身の小説だって、みんな書き出しが巧いですものね。すらすら読みいいように書いてあります。ずいぶん読者に親切で、愛情持っていた人だと思います。◆古典風(昭和15年)
◆清貧譚(昭和16年)