今日、井上靖の自伝的小説『あすなろ物語』(1954)を読み終えました。
この作品について、文庫本裏表紙の解説を引用します。
この作品について、文庫本裏表紙の解説を引用します。
天城山麓の小さな村で祖母とふたり土蔵で暮らしていた鮎太少年が、多感な青年時代を経て新聞記者となり、終戦を迎えるまで――ひとりの人間の少年期から壮年期までの成長の過程における感受性の劇を、六つの物語に謳いあげた青春小説。あすは檜(ひのき)になろうと念願しながら、永遠に檜になれないという悲しい説話を背負った爐△垢覆蹲瓩量擇紡靴董著者自身の《詩と真実》を描く。
◆井上靖は10代の頃最も好きだった作家です。『しろばんば』(60)や『夏草冬濤』(64)、『北の海』(68)といった自伝的作品は主人公に年齢が近かったので、自分をダブらせながら読むことができました。また、『天平の甍』(57)や『敦煌』(59)、『蒼き狼』(59)などの歴史を題材にした作品は、より歴史が好きになるきっかけになったと思います。
先日、書店で『あすなろ物語』を目にしたので、久々に彼の作品を読んでみようと思いました。
先日、書店で『あすなろ物語』を目にしたので、久々に彼の作品を読んでみようと思いました。
◆『あすなろ物語』は、「深い深い雪の中で」と「寒月がかかれば」、「漲ろう水の面より」、「春の狐火」、「勝敗」、「星の植民地」の6編からなる連作短編集のような作品です。
主人公は梶鮎太。各編には少年期から青年期、そして壮年期へと向かう鮎太の姿が描かれています。各編に登場する女性たちが鮎太の成長や生き方に影響を与えています。「深い深い雪の中で」の冴子、「寒月がかかれば」の雪枝、「漲ろう水の面より」の佐分利信子、「春の狐火」の清香、「勝敗」の加島浜子、「星の植民地」のオシゲです。
初めて読んだ中学生の頃、「春の狐火」の鮎太と清香の場面がよく理解できませんでした。後年、その意味がわかってからは、この場面がこの作品のハイライトのように思えてなりません。
主人公は梶鮎太。各編には少年期から青年期、そして壮年期へと向かう鮎太の姿が描かれています。各編に登場する女性たちが鮎太の成長や生き方に影響を与えています。「深い深い雪の中で」の冴子、「寒月がかかれば」の雪枝、「漲ろう水の面より」の佐分利信子、「春の狐火」の清香、「勝敗」の加島浜子、「星の植民地」のオシゲです。
初めて読んだ中学生の頃、「春の狐火」の鮎太と清香の場面がよく理解できませんでした。後年、その意味がわかってからは、この場面がこの作品のハイライトのように思えてなりません。