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ジャック・ロンドン『犬物語』を読みました。

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 今日、ジャック・ロンドンの短編集『犬物語』(柴田元幸編訳、2017)を読み終えました。
 この作品について、「訳者あとがき」からその一部を引用します。
 『火を熾(おこ)す』はジャック・ロンドンの短篇の多彩ぶりを伝えることをめざして編んだが、今回はタイトルどおり、もっぱら「犬の話」に絞った。犬を主人公とする短篇を3本、中篇を1本、そしていわば「付録」として、犬の出てこない短編を1本収めた。
 ロンドンの作品群のなかで、犬は人間に次いで二番目に重要な動物である。本書にも収録した、ロンドンのもっとも有名な作品である「野性の呼び声」は、終始一匹の犬の視点から、人間による洞察を加えつつ語られるし、また、そこそこ楽しめる短篇にとどまっていた1902年版「火を熾す」が、1908年版において、ロンドン最良の短篇であるにとどまらずアメリカ文学史上屈指の名短篇に変容する上で欠かせなかったのは、極寒の地を旅する男に犬が同伴者として加わったことだった。多作であったロンドンが残した厖大な作品数からすれば、犬が中心となっている作品は決して多くないが、多くの読者は彼を「犬の話を書く作家」と認識しているし、ロンドン自身も“my dog public”(わが犬読者たち――編集者に宛てた1916年の電報のなかの言葉)を自分の最大の読者層と見ていた。

【収録作品】(  )は発表年
ブラウン・ウルフ(1906)
 カリフォルニアが舞台。ある日、アーヴィン夫妻の山中のコテージに一匹の犬が迷い込みます。夫妻はその犬を世話しますが、すぐ北方へと逃げ出してしまいます。一年間、逃走と連れ戻しを繰り返した末、ウルフと名づけられたその犬は夫妻のもとにとどまることにしたようです。
 そんな時、クロンダイクからやって来たというスキフ・ミラーが、姉の家を尋ねて夫妻のコテージにやって来ます。そして、そこでウルフを見ると、それは自分の犬だと言い張ります。彼の話によると、ウルフは彼の橇の先導犬で、3年前に盗まれたとのこと。また、名前は「ブラウン」とのこと。
 さて、ウルフ/ブラウンはこれからどうなるのか? 話し合いの結果、それは犬自身に決めさせることにします。
※クロンダイク:カナダのユーコン準州に広がる地域の名称。西側をアメリカ合衆国アラスカ州と国境で接する。

バタール(02)
 シンリンオオカミの父とハスキー犬の母の間に生まれたバタールは、両親から受け継いだ生来の性質はあったかもしれませんが、「地獄の申し子」と言われるような邪悪な存在になったのは、飼い主ルクレールのせい。ルクレールの最期がああなったのは自ら招いた結果でしょう。

あのスポット(08)
 「俺」が、かつては自分の弟以上に愛したスティーヴン・マッカイを卑劣な人間だと決めつけるようになった訳は・・・・。一匹のとんでもない犬のせいでした。

野性の呼び声(03)
 19世紀末、カナダ・ユーコン準州のクロンダイク地方で起こったゴールドラッシュがこの物語の背景です。
 主人公「バック」は、セントバーナードの父とスコッチシェパードの母の間に生まれた140ポンドもある大型犬です。彼は4歳になるまでカリフォルニアの裕福な屋敷で満ち足りた暮らしをしていましたが、誘拐され、そり犬として売られ、過酷な運命にさらされます。
 バックは激変する環境の中、人間や他の犬とのかかわり方を学び、極寒の地で生き残る術を身につけていきます。そして、彼は父母の祖先から受け継がれて来た本能に目覚め、他の犬たちから尊敬され恐れられるリーダーに成長していきます。最後の飼い主がイーハット族(インディアン)に殺された後、彼は人間の世界を離れ、狼の群れに合流し、そのリーダーとなります。
 アメリカ小説の大きなテーマのひとつは、「人間が自己の環境に対していかに対応し、いかに戦ってゆくか」ということです。この作品の主人公は人間ではありませんが、バックはこのテーマの忠実な実践者となっています。逆に、この作品中には環境に適応できない人間や犬たちが多く登場し、その弱さ、愚かさが際立っています。

火を熾す(02)(未読)
 名作とされる1908年版(柴田元幸編訳『火を熾す』収録)と違い、こちらには犬が出てこない。犬が出てくる、出てこないというのが両者のひとつの大きな違いだが、もうひとつ誰もが指摘するお大きな違いは、02年版では極寒を旅する男に「トム・ヴィンセント」と名前がついていたのに対し、08年版では単に「男」(the man)と呼ばれ、より普遍的な存在となっているという点である。(以上、「訳者あとがき」より)

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