今日、『ジャック・ロンドン幻想短編傑作集』(有馬容子訳、2008)を読み終えました。
この作品集について、巻末の「訳者あとがき」から一部引用します。
この作品集について、巻末の「訳者あとがき」から一部引用します。
本書は、ジャック・ロンドンの幻想文学作家としての力量が表れている短編作品のなかから、もっとも評価の高い作品を選んだ。死の直前の半年間に書かれた11編の中から「赤い球体」、「水の子」、「古代のアルゴスのように」、そしてこれらの作品以前に書かれ、これらの作品の伏線となっているものとして重要な「コックリ占い板」、「夜の精」の2編を訳出した。「水の子」をのぞいて本邦初訳である。
【収録作品】( )は執筆年
◆夜の精(1910)
トレファサンは、19世紀末にカナダユーコン準州のクロンダイクに起こったゴールドラッシュにより財産を築いた、他者からすれば人生の成功者と言ってもいい人物です。彼はクロンダイクへ向かう途中、白人が誰も足を踏み入れたことがない大きな渓谷に迷い込みます。そこではインディアンの部族が未開の暮らしをしていました。彼はそこの酋長で白人女性ルーシィと出会い、彼女の身の上話を聞きます。そして彼女からここでともに暮らすよう誘われますが、彼は妻が待っていると嘘を言い、クロンダイクへ向かいました。その判断が正しかったのか、誤りだったのか、彼は今でも葛藤を続けています。
◆夜の精(1910)
トレファサンは、19世紀末にカナダユーコン準州のクロンダイクに起こったゴールドラッシュにより財産を築いた、他者からすれば人生の成功者と言ってもいい人物です。彼はクロンダイクへ向かう途中、白人が誰も足を踏み入れたことがない大きな渓谷に迷い込みます。そこではインディアンの部族が未開の暮らしをしていました。彼はそこの酋長で白人女性ルーシィと出会い、彼女の身の上話を聞きます。そして彼女からここでともに暮らすよう誘われますが、彼は妻が待っていると嘘を言い、クロンダイクへ向かいました。その判断が正しかったのか、誤りだったのか、彼は今でも葛藤を続けています。
◆赤い球体(16)
イギリス人科学者バセットは、羽の端から羽の端まで30cmもあるという有名な蝶を求め、グアダルカナル島に上陸します。しかし、そこで彼を待っていたのは食人種で首狩族のブッシュマンでした。
バセットは彼等から命からがら逃げますが、途中大音量の不思議な音を耳にします。そして、逃走の果てに熱病に冒され、迷い込んでしまった首狩族の首長の村でその音を発するのは「赤い球体」だということを知ります。バセットは衰えゆく体力の中、自らの死を覚悟します。そして、「赤い球体」の謎を教えてくれれば、自分が死ぬ前に首を切っていいと、呪い師ガーンに申し出るのです。
読み始めた時、主人公のバセットがどこにいるのかわかりませんでした。彼は熱病で衰弱し、呪い師ガーンの家に寝ていたのです。呪い師から早く首を切らせろ。お前の首は上手に燻し、これまでには無かったような素晴らしいものにすると言われ続けながら。著者の意図はよくわかりませんが、文明社会からやってきた主人公が、残酷で不潔でグロテスクな未開社会に敗れるという構図が描かれています。
イギリス人科学者バセットは、羽の端から羽の端まで30cmもあるという有名な蝶を求め、グアダルカナル島に上陸します。しかし、そこで彼を待っていたのは食人種で首狩族のブッシュマンでした。
バセットは彼等から命からがら逃げますが、途中大音量の不思議な音を耳にします。そして、逃走の果てに熱病に冒され、迷い込んでしまった首狩族の首長の村でその音を発するのは「赤い球体」だということを知ります。バセットは衰えゆく体力の中、自らの死を覚悟します。そして、「赤い球体」の謎を教えてくれれば、自分が死ぬ前に首を切っていいと、呪い師ガーンに申し出るのです。
読み始めた時、主人公のバセットがどこにいるのかわかりませんでした。彼は熱病で衰弱し、呪い師ガーンの家に寝ていたのです。呪い師から早く首を切らせろ。お前の首は上手に燻し、これまでには無かったような素晴らしいものにすると言われ続けながら。著者の意図はよくわかりませんが、文明社会からやってきた主人公が、残酷で不潔でグロテスクな未開社会に敗れるという構図が描かれています。
◆コックリ占い板(06)
クリスは、コックリ占い板が示したルートの父による自分への殺意を非科学的なものとして信じようとしませんでした。
クリスは、コックリ占い板が示したルートの父による自分への殺意を非科学的なものとして信じようとしませんでした。
◆古代のアルゴスのように(16)
ジョン・ターウォーターは、かつてカリフォルニア・ゴールドラッシュで広大な土地を手に入れましたが、その後の投機の失敗でその大部分を失ってしまいました。彼はその挽回を図ろうとパタゴニアへ金を採掘に行こうとしましたが、家族の反対にあい断念せざるを得ませんでした。
そして今、クロンダイク・ゴールドラッシュが起こると、彼はクロンダイクをめざそうとします。金を掘りあて失った土地を買い戻すために。息子たちは、70歳になる老人のそんな考えを狂っていると決めつけますが、彼は密かに旅立ちます。クロンダイクへの旅は苦難の連続で、一攫千金を狙う多くの者が挫折するなか、彼はクロンダイクにたどり着きます。
アルゴスとは、訳者による解説によれば、「ギリシャ神話でイアソンの船を建造したアルゴ船隊員で、彼はイアソンと一緒に旅し、ドラゴンの監視の目をくぐり抜けて、アイエテス王が保管しておいた黄金の羊毛を盗み出すことに成功した」ということです。
ジョン・ターウォーターは、かつてカリフォルニア・ゴールドラッシュで広大な土地を手に入れましたが、その後の投機の失敗でその大部分を失ってしまいました。彼はその挽回を図ろうとパタゴニアへ金を採掘に行こうとしましたが、家族の反対にあい断念せざるを得ませんでした。
そして今、クロンダイク・ゴールドラッシュが起こると、彼はクロンダイクをめざそうとします。金を掘りあて失った土地を買い戻すために。息子たちは、70歳になる老人のそんな考えを狂っていると決めつけますが、彼は密かに旅立ちます。クロンダイクへの旅は苦難の連続で、一攫千金を狙う多くの者が挫折するなか、彼はクロンダイクにたどり着きます。
アルゴスとは、訳者による解説によれば、「ギリシャ神話でイアソンの船を建造したアルゴ船隊員で、彼はイアソンと一緒に旅し、ドラゴンの監視の目をくぐり抜けて、アイエテス王が保管しておいた黄金の羊毛を盗み出すことに成功した」ということです。
◆水の子(16)(未読)
柴田元幸編訳『火を熾す』に収録されており、先月読んだばかりなので、今回はパスしました。
柴田元幸編訳『火を熾す』に収録されており、先月読んだばかりなので、今回はパスしました。